FXには、「成行注文」「指値注文」「逆指値注文」と、3つの代表的な注文方法があります。この中でFX初心者におすすめしたいのは、「成行注文」です。非常にシンプルかつ分かりやすい注文方法なので、数回取引をすれば、すぐマスターできるでしょう。しかし、成行注文という言葉を初めて聞いた人も少なくないでしょう。
そこで今回は、FXで大活躍をする「成行注文」について説明します。意味やメリット・デメリットはもちろん、他の注文方法との違いや成行注文を上手く使うコツなどもまとめたので、参考にしてください。
成行注文とは
成行注文とは、現時点の価格でポジションを保有したい場合に使う注文方法です。その場の成行に任せて注文を出すことから「成行注文」と呼ばれています。例えば、ポンド円の価格が140円だとしましょう。ここで成行注文を出した場合、140円でポジションを持つことになります。150円で決済注文を出した場合は、150円でポジションを手放したことになります。
成行注文は、「リアルタイムトレード」や「マーケット注文」、「クイックトレード」などと呼ばれることもありますが、呼び方が異なるだけですべて意味は同じです。
成行注文のメリット
成行注文は流れに任せて注文を行うため、しっかり考えて行動できていないのではないか、と悪いイメージを抱く人もいるでしょう。しかし、実はたくさんのメリットがあります。現在進行形でプロトレーダーも使っている注文方法なので、安心してください。それでは、成行注文を使う5つのメリットを紹介します。
リアルタイムで注文できる
成行注文は、その名の通り、その場の価格でポジションを持てる注文方法です。直感的で分かりやすいので、FX初心者にぴったりでしょう。また、リアルタイムで注文できるため、相場に急激な変動があったとしても、すぐに対応できます。
スピーディーな対応は、チャンスを掴むためにはもちろん、損失を最小限に抑えるためにも欠かせません。例えば、相場が急上昇し、大陽線(相場の上昇力が強い場合に現れるローソク足)が現れたとしましょう。この場合、セオリー通りにチャートが動けば、一旦下落します。そのため、大陽線の天井付近で売りの新規注文、下落したタイミングで決済注文をそれぞれ成行注文で出すことができれば、高い確率で利益を得られるでしょう。
素早く確実に注文できる
相場は、1秒単位で変化しています。そのため、現在思いついた戦略も1分後には有効ではない戦略になっていることも珍しくありません。以上の理由から、注文に時間をかけるのはあまり好ましくない行動と言えます。そこで役に立つのが「成行注文」です。
通貨ペア・エントリーの方向・ポジションの数量を設定し、「買い(buy)」または「売り(sell)」のボタンをクリックすれば、すぐ注文が完了します。この「素早く」そして「確実」に注文できるのは、成行注文ならではの強みです。慣れれば、1〜5秒で注文を出せるでしょう。スキャルピングで利益を出したいと考えている人は、成行注文を覚えることをおすすめします。
ポジションを分割して決済できる
ポジションを保有した後は、利益を確定するために決済をしなければいけません。しかし、最低限の利益だけを確保し、後はもう少し利益を伸ばしたいという場合もあるでしょう。そのときに役立つのが「成行注文の分割決済」です。
例えば、ドル円を10ロット(ポジションの数量)保有していたとしましょう。すでに10万円の利益が出ているため、7割の利益を確保したいと考えました。この場合は、10ロット中7ロットのみを決済しましょう。このように決済注文を出すと、7ロットは消滅しますが、残りの3ロットは保有したままになります。
分割決済に手数料や回数制限などはありません。分割決済を利用したことによる損失は生まれないので、安心してください。
優先的に約定される
FXには、大きく分けて「成行注文」と「予約注文」の2つの注文方法があります。このうち、優先的に処理されるのは「成行注文」の方です。素早い判断が求められる状況では、成行注文を使った方が有利に取引できるでしょう。
また、予約注文は約定(注文が確定すること)しないことがあります。しかし、成行注文はその場の価格で注文を出すので、約定しないことがほぼありません。そのため、成行注文は予約注文よりも安定していると言えるでしょう。この優先度の問題から、スキャルピングでは成行注文を活用した方が勝ちやすくなると言われています。
すぐに現金にすることができる
予約注文の場合は、「注文を出す」→「条件が満たされるまで待つ」→「約定」という流れで進みます。この「条件が満たされるまで待つ」というワンクッションがあるため、すぐ現金化することができません。
しかし、成行注文は「注文を出す」→「約定」という2ステップで処理が進みます。条件が満たされるまで待つ必要がないので、素早く現金化できます。成行注文は、非常に資金効率がよい注文方法と言えるでしょう。
成行注文のデメリット
5つのメリットがある成行注文ですが、もちろん完璧な注文方法ではありません。当然「デメリット」もあります。よい面と悪い面の両方を見ることで、正しい使い方ができるので、ここでしっかりデメリットも理解しておきましょう。それでは、成行注文に潜む「2つのデメリット」を紹介します。
チャート画面を見ておく必要がある
FXの相場は、基本的に不規則に動きます。電車のように時間に合わせてきっちりと動くわけではないので、値動きを完璧に予測するのは不可能です。しかし、成行注文はリアルタイムで行う注文方法です。そのため、予測しているタイミングが訪れるまで、チャートの画面を見続ける必要があります。
場合によっては、数時間、チャートの画面を見続けなければいけないでしょう。しかし、本業や就寝などから、現実的にチャートを見続けるのは不可能です。副業トレーダーは「取引機会が限られる」ことを覚えておきましょう。
スリッページが生じる可能性がある
低い確率ではありますが、成行注文でも「スリッページ」が起こる場合があります。スリッページとは、注文と約定の間に生まれる価格差のことです。例えば、ドル円が120円のときに買い注文を出しましたが、実際は120.50円で約定しました。このときの50銭がスリッページです。
スリッページが起こり、不利な価格で約定すると、その取引で勝つのは難しくなります。そのため、なるべく約定力が高いFX取引所を利用しましょう。約定力が強ければ、その通りに注文が通る可能性が高いので、スリッページは起こりにくくなります。
スリッページについて詳しくはこちらをご参考ください。
>スリッページとは?発生する理由や7つの対策方法、3つの注意点を解説!
成行注文とほかの注文方法の違い
FXには、「成行注文」の他に「予約注文」もあることを説明しました。予約注文とは、新規・決済注文のタイミングを予め指定してから注文を出すやり方です。予約注文も覚えておくと、取引を有利に進められる可能性が高まります。ここで、種類や意味を覚えておきましょう。成行注文と予約注文の違いについても説明します。
指値注文
指値注文とは、「自分に有利な価格」で注文を出す方法です。例えば、ドル円(価格は100円と仮定)の購入を買いで検討しているとします。せっかく買い注文を入れるのであれば、もう少し安いところで注文を入れたいでしょう。
このときに使うのが「指値注文」です。「99円で買い」と指値注文を入れておけば、チャートが99円に下落したタイミングで自動的に買い注文が約定します。
メリットは、「相場を見続ける必要がない」ことです。システムが自動で注文を出してくれるため、本業がある人でも理想通りの取引ができます。デメリットは、「約定しにくい」ことです。条件を満たさない限り、注文は約定しないので注意しましょう。
指値注文について詳しくはこちらをご参考ください。
>【図解】FXの指値注文・逆指値注文をわかりやすく解説!うまく使うコツは?
逆指値注文
逆指値注文とは、「自分に不利な価格」で注文を出す方法です。例えば、98円のときに購入した買いポジションを現在保有しているとしましょう。しかし、チャートは必ず上昇するわけではありません。下落し、想定外の損失を負う可能性もあります。
それを防ぎたい場合に役立つのが「逆指値注文」です。97円のところに逆指値注文を入れれば、チャートが下落したとしても損失は最大1円分に抑えられます。97円にチャートが達すると、自動で逆指値注文が入るからです。
メリットは「リスクを限定できる」こと、デメリットは、「必ず守られるわけではない」ことです。システムエラーにより、注文が約定しない場合もあるので、過信しないようにしましょう。
逆指値注文について詳しくはこちらをご参考ください。
>【図解】FXの指値注文・逆指値注文をわかりやすく解説!うまく使うコツは?
成行注文と指値注文と逆指値注文の違い
「成行注文」と「指値注文」と「逆指値注文」の違いは以下の通りです。
成行注文 | 指値注文 | 逆指値注文 | |
---|---|---|---|
使い方 | 現在の価格で注文したい場合に使う | 現在よりも有利な条件で注文したい場合に使う | 現在よりも不利な条件で注文したい場合に使う |
主な利用目的 | すぐ注文を約定させたいとき | チャートを見続けられる時間はないが、取引のチャンスは逃したくないとき | 損失が拡大するのを防ぎたいとき |
代表的なメリット | 素早く確実に注文できる | 約定すれば、有利な条件で取引できるため、勝てる確率が高まる | リスクをコントロールできる |
代表的なデメリット | チャートの画面を見続ける必要がある | 相場の変化に柔軟に対応できない | 逆指値注文を出す場所が甘いと、損失が生まれやすくなる |
成行注文と指値注文と逆指値注文を使い分ける
各注文方法を組み合わせて使う戦略もありますが、FX初心者はまずそれぞれを使い分けられるように努力しましょう。使い分け方もたくさんあるのですが、最もおすすめなのは「場面」で使い分けることです。それぞれの注文方法と相性がよい場面は、以下の表にまとめました。
成行注文 | 指値・逆指値注文 | |
---|---|---|
相性がよい場面 | ・スキャルピングで取引をしているとき ・短時間足や経済指標発表時など、相場が激しく動く状況で取引をしているとき ・ポジションの一部を手放し、リスクを低くしたいとき |
・スイングトレードやポジショントレードをしているとき ・約定させたい価格がすでに決まっているとき ・リスク・リワード(利益確定幅と損切り幅の比率)の管理を徹底したいとき |
成行注文を上手く使うコツ
成行注文はシンプルで分かりやすい注文方法なので、FX初心者から上級者まで、幅広い人に人気があります。しかし、感覚で使っていると勝率は安定しないでしょう。FXで勝っていくためには、利益の大きさよりも勝率の安定感が必要です。そこで今回は、成行注文を使いこなすために覚えたい「2つのコツ」を紹介します。
今すぐ決済したい場合に使う
成行注文は、「現在のタイミングで決済をしたいときに使う」のがコツです。成行注文以外の方法で決済注文を出すと、その注文が約定するまで時間がかかります。相場の状況によっては、一分一秒を争う場合もあるでしょう。決済までに時間がかかってしまうと、せっかくの利益が損失に変わってしまうこともあります。
しかし、成行注文であれば注文を出した瞬間に約定するため、希望通りの価格で決済できます。そのため、経済指標発表時のように一分一秒を争う場面で取引を行う場合は、基本的に成行注文を活用しましょう。
短期トレードを行う場合に使う
成行注文は、「短期トレードを行うときに使う」のがコツです。理由は、先ほどと同じくスピーディーな取引ができるからです。特にスキャルピングであれば、注文から決済まで数秒で終わることも珍しくありません。
短時間の取引になるため、成行注文以外の注文方法だと、注文や決済が間に合わない場合があります。そのため、スキャルピングのような短期トレードを行う場合は、成行注文一択と言えるでしょう。
まとめ
今回は、FXの「成行注文」について説明しました。成行注文とは、現在の価格で注文を約定させたい場合に使う注文方法です。例えば、現在の価格が100円であれば、100円で注文が約定します。シンプルで分かりやすい注文方法なので、FX初心者でも使いやすいでしょう。
メリットは、素早く確実に注文できること、そして優先的に約定されることです。スキャルピングと非常に相性がよい注文方法なので、短期トレードを行う人はぜひ使ってみてください。すぐに現金化することもできるので、資金効率を高めたい人にも成行注文はおすすめできます。