景気回復への期待や新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」の登場による不安など、2021年も様々な出来事があり、市場だけでなく心理的にも上がり下がりした年だったかと思います。
今回はそんな2021年の為替の動向を月毎に振り返ってみたいと思います。2022年の取引戦略、動向の予想についても紹介のするので、海外FX初心者、FXトレーダーの方はぜひ参考にしてみてください。
2021年上半期の為替市場の動向とは
まずは、2021年上半期の為替市場の動向から振り返っていきます。
2021年1月の為替相場振り返り
円は対米ドルで103円台から104円台に下落。対ユーロでも円は下落しました。1月は、円の為替は全体的に円安傾向となった月でした。
一方、米国株式市場では米民主党の「トリプルブルー」が実現したことで、株価が史上最高値を更新。その影響から米ドルは上昇しました。ユーロは円と同じく下落傾向にありました。
その要因は、ユーロ圏で新型コロナ変異種が感染拡大したこと。これにより景気減速懸念が強まったことなどが挙げられます。豪ドルは、中国の景気回復や商品価格の上昇などを受け上昇。しかし、米長期金利上昇の影響を受け、上げ留まる展開で1月を終えました。
2021年2月の為替相場振り返り
リスク選好的な動きから始まった2月の為替。円は1月同様、円安が加速し、対米ドルで106円台まで下落しました。これは2020年の10月以来と言われています。対ユーロでも円は下落傾向になりました。
ユーロは予想よりも景気が回復せず嫌気がさされていましたが、新型コロナワクチンの普及によって今後の景気回復が期待されました。
そのため大きな下落はせず、ほぼ横ばいで2月を終えました。円は対豪ドルで下落。豪ドルはワクチンによる景気回復が期待され、相場のリスク選好が強まる中、上昇しました。
2021年3月の為替相場振り返り
米景気回復期待の高まり、米長期金利の上昇、この2つを背景に円は対米ドルで下落。約1年ぶりに110円台後半まで円安が進みました。一方、米国と欧州の長期金利差が拡大したため、円は対ユーロで横ばい。欧州各国での「新型コロナウイルス感染の再拡大」と「ワクチン接種の遅れ」の2つの要因が上昇を足止めしていると考えられています。
ちなみに対ドルでのユーロは下落しました。円も対豪ドルで続落。豪ドルは対円で比較的順調に推移しました。これは豪州が新型コロナウイルスの広がりを抑制できていたことが要因とされています。
2021年4月の為替相場振り返り
米国の長期金利が低下したため、円は対米ドルで上昇。一時110円台後半まで円安が進みましたが、109円台前半まで回復しました。
しかし、米国と欧州の長期金利差が縮小し、欧州各国で新型コロナワクチン接種が加速したため、景気の回復が強く期待され、円は対ユーロで下落しました。ユーロに関しては対ドルで上昇しています。豪ドル/円は続落する結果となりました。
2021年5月の為替相場振り返り
5月は円相場が対ドルでもみ合う展開が多くありました。結果は、前月とほぼ横ばいです。一時108円台前半まで円高に進みましたが、その後は円安に進み109円台前半で着地しています。
これは米消費者物価指数が予想を大きく上回ったためです。ユーロ/円は、前月と変わらず下落し、133円台後半で着地しています。しかし、ユーロ/円やユーロ/ドルは上昇しました。「欧州各国での新型コロナワクチン接種の加速」と「景気回復の強い期待」の2つが要因とされています。
大きく下落しなかった豪ドル/円は84円台半ばで着地。豪州は引き続き新型コロナ感染の抑制ができていたため、大きく下がらなかったのではないかと予想されています。
2021年6月の為替相場振り返り
6月にFOMCがあり、利上げの時期の想定が予想外に前倒しされたため、円は対米ドルで111円近くまで下落しました。米国の量的緩和の早期縮小観測が強まりましたが、ユーロ/円は131円台後半まで上昇。円高という結果で着地しました。
一方、ユーロ/ドルは大きく売られるという結果になりました。これは、ECBの金融緩和政策が維持され、米欧の金融緩和姿勢に差が生まれたことが要因とされています。
豪ドル/円はポジティブニュースが比較的多く出たため、相場は上昇し、83円台前半で着地しています。
2021年下半期の為替相場の動向とは
それでは、2021年下半期の為替相場の動向について振り返っていきます。
2021年7月の為替相場振り返り
7月は円相場が主要通貨に対して上昇しました。「欧米の金利低下」と「コロナ感染拡大によるリスク回避」が円相場の上昇を後押ししたとされています。パウエルFRB議長は、現在の物価上昇を一時的なものと発言。テーパリング開始を否定する見解を示しました。
これにより米長期金利は低下し、長期金利差は縮小。米ドル/円は109円台後半まで上昇しました。合わせて、ユーロ/円も130円台前半まで上昇。豪ドル/円も豪州の長期金利低下や資源価格上昇などを受けて、80円台後半まで上昇しました。
2021年8月の為替相場振り返り
8月は円相場がレンジの多い相場になりました。ワクチン接種の進展で米景気の回復が意識され、FRB高官が早期のテーパリングに積極的な見解を示したこと、米長期金利が上昇し日米金利差がさらに拡大したことなどが背景となり、米ドル/円は一時110円台半ばまで下落しました。
米ドルの上値は重く、109円台後半で長いもみ合いが続き、結果的に110円付近で着地しています。一方、ユーロ/ドルは下落しました。
これはFRBが年内にテーパリングに踏み切るとの見方がされたからでした。ユーロ/円は130円台前半から129円台後半まで上昇しています。
豪州は新型コロナウイルスの感染拡大からロックダウンの延期を発表。ネガティブな情報が多く出ましたが80円台後半から80円台前半まで上昇しました。
2021年9月の為替相場振り返り
9月は円相場が下落傾向にありました。まず月の前半は109円台から110円台でのレンジが生まれました。しかし、米長期金利が上昇し日米金利差が拡大したことから、月末にかけて米ドル/円は111円台半ばまで下落。
FRBが11月の会合でテーパリングの開始を決めると示唆したことが、今回の下落を加速させたとされています。一方、テーパリングの情報が出た後、ユーロ/円は上昇しました。中国の経済が減速し、嫌気がさされたものの、資源高の影響が強く、豪ドル/円は80円台後半まで下落しました。
2021年10月の為替相場振り返り
10月は円相場が主要国通貨に対して下落しました。まず米ドル/円は111円半ばから114円台まで下落。約3年ぶりの安値となりました。
この下落は、トレーダーのリスク選好姿勢が強まり円が売られたり、FRBの金融政策正常化の前倒しが意識されたことなどが背景にあるとされています。
ユーロ/円も129円台前半から132円台近くまで下落。資源価格の上昇やシドニーの都市封鎖解除などを受け、豪ドル/円も80円台後半から85円台後半まで下落しました。
2021年11月の為替相場振り返り
11月の円相場は、全体的に上昇傾向にありました。これはオミクロン型への警戒から低リスク通貨と言われている円が買われることが多かったからです。まず米ドル/円は、米国のインフレ上昇を背景に、一時115円台半ばまで下落しました。
しかし、世界中でオミクロン型への警戒が強まり、トレーダーのリスク回避姿勢が強まったため、比較的早く下落から上昇に転じました。米ドル/円は113円台半ばまで回復し、前月比0.4%の円高という結果で11月を終えます。
ユーロ/円は132円近くから127円台後半へと上昇。3.1%の円高となりました。新型コロナウイルスの感染拡大、早期利上げ観測の後退、この2つがユーロ上昇の後押しをしたと言われています。
豪ドル/円は85円台半ばから80円台半ばまで大きく上昇。前月末比6.0%の円高で着地しました。
2021年12月の為替相場振り返り
オミクロン株への警戒感が若干和らいだ12月。リスクオンの動きをする投資家が増え、低リスク通貨と言われている円は全体的に下落しました。米ドル/円はオミクロン株への警戒感から112円台まで進みましたが、その後115円台まで下落しました。
米国の株式市場反発やテーパリング、そして利上げ見通しの前倒しや米長期金利の上昇などが今回の下落を加速させました。ユーロ/円に関しては、127円近辺から131円近辺まで下落。豪ドル/円も80円台半ばから83円台後半まで下落しました。
2022年のトレードで意識するべきこと
2021年は新型コロナウイルスのワクチン接種が進んだため、景気回復が期待された1年でした。2020年に比べて通貨ペアは比較的いい方向に進むことが多かったと言えます。しかし、市場の予想通りに景気が回復することはありませんでした。
このことから、レンジ相場も多かった1年です。2021年12月後半時点では、新型コロナウイルスの感染者が減少傾向にあったため、この状況が続くのであれば相場は良い方向に進むのではないかと言われていました。
しかし実際は、2022年に入ってオミクロン株の感染者数が著しく増加傾向にあります。コロナウイルスの新型株が市場にもたらす影響を随時チェックしながら、リスク管理を徹底してトレードしていきましょう。
2022年はオミクロン株の動向に注意
今回は、2021年の為替相場の動向をまとめて一気に振り返ってみました。2021年の為替相場は「景気回復の期待」で動くことが多かったように思われますが、市場の予想通りに景気が回復することはなく、小さな値動きで1ヶ月が終わるというケースも少なくありませんでした。
2022年も引き続き、景気回復の期待がダイレクトに市場に反映されると考えられます。しかし、オミクロン株が今以上に猛威を振るう可能性もあるので、しっかりリスク管理も徹底していくことをおすすめします。