FXのチャートは、上昇→下落→上昇という形で動くのが一般的です。この反転のタイミングを狙ってエントリーをすれば、利益を得ることができるでしょう。しかし、反転のタイミングを感覚で予測するのはギャンブル性が高くおすすめできません。そこでおすすめしたいのが、「移動平均線乖離率を活用する」ことです。
今回は、FX初心者でも理解できるほど分かりやすく移動平均線乖離率について説明します。見方や注意点はもちろん、移動平均線乖離率を使ったトレード手法も4つ紹介するので、取引する際の参考にしてください。
移動平均線乖離率とは
移動平均線乖離率とは、現在の価格が移動平均線からどのくらい乖離しているのかを数値化した指標です。移動平均線を基準とし、通貨ペアのチャートが移動平均線よりも上にある場合は上方乖離、下にある場合は下方乖離と言います。移動平均線乖離率は、以下のような考えにもとづいて活用されています。
・移動平均線は、チャートの動きの慣性を引き出したインジケーターである
・チャートと移動平均線が大きく離れている場合は、チャートが上下に行き過ぎたことを表している
・このまま離れ続けることはなく、チャートは移動平均線の慣性力によって引き戻される
移動平均線乖離率を活用すると、「価格の天底」と「トレンドの反転」が予測できるようになります。
移動平均線乖離率とRSIは何が違う?
RSI(アールエスアイ)とは、一定期間の値幅をもとに、通貨の買われ過ぎ・売られ過ぎを判断するインジケーターです。0〜100%の数値が用意されており、チャートが70%以上を推移していれば買われ過ぎ、30%以下を推移していれば売られ過ぎと判断します。
移動平均線乖離率もRSIも「通貨の売買比率」を把握できるインジケーターという点では同じですが、「数値の上限」が異なります。例えば、買い注文が100個入り、RSIの数値が100%になったとしましょう。
RSIは100%が上限なので、追加で200個買い注文が入っても数値は100%から変わりません。しかし、移動平均線乖離率は、数値の上限がないので、注文が入るたびに数値が上昇していきます。そのため、通貨ペアの売買比率は、移動平均線乖離率の方が具体的に判断できると言えます。
RSIについて詳しくはこちらをご参考ください。
>海外FXのRSIとは?使い方や見方などを徹底解説!
移動平均乖離率の計算方法
移動平均線乖離率は以下の計算式で求められます。
((終値−移動平均値)÷ 移動平均値)× 100
例えば、ドル円の終値が110円で、移動平均線の価格が100円だったと仮定しましょう。その場合は、以下の計算式が成り立ちます。
((110円 – 100)÷ 100)× 100 = 10
今回の例だと、移動平均線乖離率は10%となります。
移動平均線乖離率の見方
移動平均線乖離率には、難しい漢字が使われています。使い方も難しそうという印象を抱いている人もいるでしょう。しかし、想像しているほど難しくはありません。見るべきポイントは「1つ」だからです。それでは、「移動平均線乖離率の見方」をFX初心者でも理解できるように分かりやすく説明します。
乖離率が+3%を超える時
移動平均線乖離率の基準値は、0%です。チャートが+3%付近まで上昇した場合は、売りのサインが出ていると判断しましょう。+3%からさらに上昇する可能性は低く、セオリー通りにチャートが動けば、この後下落してくるからです。+3%付近で売りエントリーをし、0%付近で決済をすれば、高い確率で利益を得られるでしょう。
しかし、+3%を超えてもチャートが高値圏を推移し続けるケースもあります。その場合は、まだ買い勢力が弱まっていないと予測できるので、リスクに備えて損切りラインを決めておきましょう。
乖離率が−3%を超える時
チャートが−3%付近まで下落した場合は、買いのサインが出ていると判断しましょう。セオリー通りに動けば、この後、チャートが上昇する可能性が高いからです。チャートが−3%よりもさらに下落する可能性は高くないので、損切りは浅めに入れておいてもよいでしょう。
−3%付近で買いエントリーした場合の利益確定の目安は、0%付近です。チャートの上昇する力が強く、少しリスクが取れるのであれば、+1%〜+2%付近までポジションを保有し続けてもよいでしょう。+3%までポジションを保有するのは、リスクが高すぎるのでおすすめしません。
移動平均線乖離率を使ったトレード手法
移動平均線乖離率の意味と見方を理解することができれば、実際に取引で使えます。しかし、現在は取引手法が多いので、どれを使えばよいのか悩むでしょう。せっかく取引手法を選べても難易度が高ければ、使いこなすのは難しいと言えます。そこでこの段落では、FX初心者におすすめしたい「移動平均線乖離率を使ったトレード手法」を紹介します。
基本的な逆張り
移動平均線乖離率は、「移動平均線から価格が離れてもいずれは戻ってくる」という考えのもと使われていると説明しました。多くのトレーダーは、±3%の値を意識している傾向があります。これらの特徴を押さえて、+3%を超えたタイミングで売りエントリー、−3%を超えたタイミングで買いエントリーしていきましょう。利益確定は、価格が移動平均線付近に戻ったタイミングで行います。
5日移動平均線を使った逆張り
5日移動平均線とは、5日分の平均価格を繋いだ線のことです。5日移動平均線を価格が下回り、その平均線が下向きになった場合に買いでエントリーしていきます。売りエントリーは、5日移動平均線を価格が上抜けし、その平均線が上向きになったタイミングで行いましょう。5日移動平均線を使った逆張り手法は、スキャルピングや短期のデイトレードなどと相性がよいとされています。
ダイバージェンスを使った逆張り
ダイバージェンスとは、価格とインジケーターの動きが逆行する現象のことです。この現象は、トレンドの力が弱まっているときによく起こります。エントリーの手順は、以下にまとめました。
1.ダイバージェンスが出現したことを確認する
2.移動平均線乖離率が3%の値に達したことを確認し、逆張りでエントリーをする
ダイバージェンスを使った逆張り手法は、移動平均線乖離率とダイバージェンスの2つの根拠を組み合わせた手法です。そのため、他の取引手法よりも成功確率は高くなるでしょう。
ダイバージェンスについて詳しくはこちらをご参考ください。
>海外FXのダイバージェンスとは?見方やおすすめのインジケーターを紹介!
乖離率を使ったラインブレイク
この取引手法を使う場合は、まずチャートにトレンドラインを引きます。下落トレンドであれば高値同士を結び、上昇トレンドであれば安値同士を結びましょう。今回は、下落トレンドで高値同士を結んだとします。この場合、右肩下がりのトレンドラインが完成します。
移動平均線乖離率は、「価格はいずれ移動平均線に戻ってくる」という考えのもと使われているため、いつかチャートが右肩下がりのトレンドラインを上抜けするでしょう。チャートがトレンドラインを上抜けしたタイミングは、「上昇トレンドの始まり」を意味します。そのため、上抜けした瞬間を狙って買いでエントリーしていきましょう。
利益確定は、安値同士を結んだトレンドラインをチャートが下抜けしたタイミングで行います。
移動平均線乖離率を使いこなすためには?
先ほどは、移動平均線乖離率を使った基本的なトレード手法を説明しました。王道の取引手法なので、機能する可能性が高く、使いやすいでしょう。しかし、勝率を上げられるかはトレーダーの裁量によります。ここでは、その勝率を1%でも高められるように「移動平均線乖離率を使いこなすコツ」を3つ紹介します。
トレードルールを明確にする
具体的には、「AになったタイミングでBをする」とルールを決めましょう。例えば、以下のようなイメージです。
・ダイバージェンスが解消されたタイミングで損切りをする
・明確なトレンド転換を確認したタイミングでエントリーをする
トレードルールを決めないと、感覚での取引になってしまいます。感覚で取引を行うと、根拠のないエントリー・決済を繰り返していくことになるでしょう。それは、投資というよりも投機です。
投機は、非常にギャンブル性が高く、将来的に投資資金をすべて失う可能性が高いやり方です。FXの世界で長く取引していきたいと考えているのであれば、投機ではなく投資を覚えましょう。
ドルコスト平均法を活用する
ドルコスト平均法とは、通貨をこまめに購入し続け、通貨ペアの平均購入額を下げる投資手法です。例えば、ドル円を「100円」「99円」「98円」のときに購入したとします。この場合のドル円の平均購入価格は99円なので、ドル円の価格が99円を超えると損失が利益に変わります。
FXで的確なエントリーポイントを見極めるのは非常に困難です。また、1回の取引に投資資金の大部分を投入すると、その取引が失敗した場合に大きな損失を負います。しかし、ドルコスト平均法を使えば、的確にエントリーできなくても大きな損失を負うのを防ぐことができます。FXであまりリスクを負いたくない人は、このドルコスト平均法を活用しましょう。
過去の乖離率を分析する
通貨ペアによって乖離率が異なります。過去の乖離率を見て、今回はどれほどの乖離が予測されるのか分析しましょう。例えば、平均乖離率が3%なのに対して、10%の乖離を狙うのは無謀です。今回の例だと、最大でも3%の乖離を狙っていくのが正解です。
乖離率と利益の大きさは比例するので、大きな乖離を狙いたくなる気持ちも理解できますが、無謀な乖離を狙うのはリスクが高まるので止めましょう。
移動平均線乖離率の注意点
トレード手法と使いこなすコツを説明したので、すでにあなたは移動平均線乖離率を使えるようになっているでしょう。すぐ使いたいと心を躍らせている人もいると思いますが、最後に「注意点」も理解しておくことをおすすめします。注意点を理解すれば、リスクを避けられる可能性が高まるからです。それでは、移動平均線乖離率の注意点を紹介します。
ボラティリティに注意
ボラティリティとは、値動きの激しさのことです。基本的に、ボラティリティが小さいと移動平均線乖離率は低くなるので、エントリーポイントが少なくなります。特にレンジ相場ではボラティリティが低くなりやすいので、注意してください。
ボラティリティが低い相場でエントリーすると、失敗する確率が高まります。移動平均線乖離率を使って取引をする場合は、ボラティリティが高い相場を選ぶようにしましょう。
損切りのタイミングに注意
移動平均線乖離率は、エントリーポイントと利益確定のタイミングが分かりやすいという特徴があります。しかし、損切りのタイミングが分かりにくいという欠点もあります。取引スタイルや考え方などによっても適切な損切りのタイミングは異なりますが、FX初心者は「投資資金の2%の損失が出たタイミングで損切りする」ことを心がけましょう。
乖離率を重視し過ぎない
チャートの流れは、乖離率だけで決まるわけではありません。世の中の経済状況や経済指標の結果など、さまざまな状況が織り込まれてチャートが動きます。移動平均線乖離率の「移動平均線から乖離しても価格はいずれ戻ってくる」という考えを過信すると失敗する可能性が高まります。乖離率は、あくまでも「エントリー・決済ポイントを見つける一つの目安」として使うようにしましょう。
マイナー通貨では機能しない場合がある
マイナー通貨とは、南アフリカランドやトルコリラなどの流動性が低い通貨のことを指します。マイナー通貨だと機能しない場合があるという理由は、「取引している人数が少ない」からです。トレーダーの数が少ないので、一人一人の相場に与える影響が大きくなります。
例えば、移動平均線の乖離を狙って99人が売りエントリーしたが、残りの1人が99人以上の投資資金で買いエントリーしたと仮定しましょう。この場合、移動平均線乖離率の原則を無視してチャートは上昇していきます。メジャー通貨だと、一人一人の相場に与える影響が小さくなるので、先ほどのような事例が起こることは基本ありません。
FX初心者が移動平均線乖離率を使う場合は、ドル円やユーロドルなどのメジャー通貨で取引することをおすすめします。
まとめ
今回は、移動平均線乖離率について説明しました。移動平均線乖離率とは、現在の価格が移動平均線からどのくらい乖離しているのかを数値化した指標です。「価格の天底」と「トレンドの反転」が予測できるようになるので、主に逆張りトレーダーから人気があります。
移動平均線乖離率を使う場合は、「±3%」に注目しましょう。この値にチャートが近づいてきたときが、売買のタイミングだからです。まずは、今回紹介した基本的な逆張りを使って実際に取引をしてみてください。比較的扱いやすいので、FX初心者でもすぐ使いこなせるでしょう。