FXの情報収集をしたり本を読んだりすると、時々アノマリーといった言葉が出てきます。このアノマリーはあまり根拠のある現象ではないものの、時々発生するので覚えておいて損はしないでしょう。今回は、FXでよく発生するアノマリーについて説明します。毎月起こる可能性があるアノマリーの例もまとめたので参考にしてください。
FXのアノマリーとは
FXでよく使われるアノマリーとは、理論的根拠があるわけではないが起こる現象のことです。これは、私たちの日常生活でも起こります。例えば、「このお守りを持っているとよいことが起こりやすい」「某テーマパークの開園記念日初日は雨が降りやすい」などです。
この「よく分からないがなぜか起こる」ということが、FXの相場でも時々起こります。なお、FXのアノマリーは、他の相場に比べてかなり規則的に動くという特徴があります。
アノマリーは本当に当たる?
繰り返しになりますが、アノマリーに理論的根拠はありません。プロのトレーダーが見解を示していることもありますが、それはあくまでも推測であり、確実的なものではありません。この特性から、アノマリーが本当に当たるとは言い切れないのが現状です。
しかし、いくつかの条件が揃うと確率高くアノマリーが起こります。そのため、無視せず、おまけ程度に考えてチャンスを伺ってみましょう。
検証する際の注意点
大きなアノマリーはある程度固定されていますが、小さなアノマリーは定期的に増えます。もしも、アノマリーの存在が疑われる場合は一度検証してみましょう。しかし、検証する際は検証する項目の数や回数に注意してください。
理論上、思いつく限りデータの異常値を探せばアノマリーを簡単に見つけられます。しかし、検証する項目や回数が多いほど、本来優位性はないのに偶然起こった異常値を拾ってしまうリスクが高まります。これを防ぐために、なぜその異常値が出たのかある程度説明ができる背景要因が分かるものに絞って検証をするようにしましょう。
【月別】FXで起こるアノマリーの例
現在のFXには、たくさんのアノマリーがあります。1月〜12月まで、毎月起こる傾向があるのでよくチェックしておきましょう。ここでは、毎月起こる可能性があるアノマリーの詳細について説明します。
1月
1月は、ジャニュアリーエフェクトというアノマリーが起こる傾向にあります。これは、1月の相場の流れがその年全体のトレンドになりやすいといったアノマリーです。このアノマリーが適用されやすいのは、ドル円です。
新規の資金が投入されやすい株式相場の場合、1月は上昇トレンドが形成される可能性が高いと言われています。為替相場が株式相場に相関すれば、ドル円の相場は上昇していく可能性が高いでしょう。
また、1月に形成された高値・安値がその年の高値・安値になりやすいとも言われています。中長期のボックストレードをする人は、1月に形成された高値・安値を把握しておきましょう。
2月
2月は、節分天井・彼岸底というアノマリーが起こる傾向にあります。これは、ドルを円に換える動きが活発化して、円高になりやすいといったアノマリーです。ドルを円に換える動きが活発化する要因は、今のところ以下のように考えられています。
・米国債の利払いや償還があるため
・ヘッジファンドの決算に関連した45日ルールがあるため
主にドル円の相場は、月初めから月末まで下落する傾向があります。この特徴から、2月はあまり上目線で戦略を立てないようにしましょう。
3月
3月は、日本企業の年度決算が多い月です。リパトリエーションを行うために、保有している外貨を日本円に換える動きが多くみられます。これにより、3月は円高ドル安になる傾向があります。ドル円で為替相場を見ると、引き続き下落トレンドが続くでしょう。そのため、3月も下目線で取引戦略を立てることをおすすめします。
4月
4月は、2月・3月と続いていた下落相場が終わり、ドル高円安になりやすいと言われています。その理由は、以下の通りです。
・ゴールデンウィークの旅行に備えて、現地の通貨に両替する日本人が増えるため
・日本企業(機関投資家)の多くが4月から新年度になるため
・還付金を受け取った外国の投資家がリスク資産買いに積極的になるため
日本企業は、新年度になると予算に従って株式や社債などのリスク資産を購入する傾向があります。また、ゴールデンウィークは通常よりも海外旅行をする日本人が増えるでしょう。そのため、たくさんの円が売られます。
さらに、外国人の投資家は4月の確定申告を済ませたら還付金を受け取れます。これにより手元の資金が増えるため、リスク資産を積極的に購入する人が増えます。以上の特徴から、ドル高円安になり、4月のドル円の相場が上昇しやすいので覚えておきましょう。
5月
5月は、SELL IN MAY(セル・イン・メイ)というアノマリーが起こる傾向にあります。SELL IN MAYとは、「Sell in May and go away; don’t come back until St Leger day」を略した言葉です。日本語に翻訳すると「5月には株を全て売って、9月の第二土曜日までは相場に戻ってくるな」という意味になります。これにより、株式マーケット全体が売りムードに包まれます。
多くの株式が売られると、為替相場は円高ドル安になる傾向があるので注意しましょう。ドル円を扱う際、5月は下目線で取引戦略を立てることをおすすめします。
6月
6月は、ファンドの夏休みというアノマリーが起こる傾向にあります。ファンドが夏休みに入ると、市場の参加者が減るので為替相場があまり動かなくなります。これまで形成されてきたトレンドが一旦終了しやすい月なので、覚えておきましょう。6月はレンジ相場が形成される傾向にあります。そのため、6月はボックストレードを中心に利益を狙っていきましょう。
7月
7月は、サマーラリーというアノマリーが起こる傾向にあります。これは、バカンス前のアメリカ人が夏のボーナスで株を購入するため、株価が上昇しやすいといったアノマリーです。株価が上昇すれば、ドル円の相場も影響を受けて上昇する傾向にあります。
6月の後半にボックストレードのポジションは手仕舞い、7月からは上昇トレンドに備えてポジションを仕込むようにしましょう。
8月
8月は、日本の長期休暇(お盆や夏休み)と海外のバケーションが重なる時期です。この時期は市場参加者がかなり少なくなるので、値動きが穏やかになります。しかし、お盆休みがある日本のマーケットは実需を中心に売り相場になる傾向があります。アメリカ国債の利払いが行われる時期でもあるので、円安になる可能性が高いでしょう。
8月の相場は、少し読みづらいと言えます。不安な人やあまりリスクを負いたくない人は、一旦ポジションを整理して静観しておきましょう。
9月
休み明けの9月は、多くの投資家が市場に帰ってきます。ここから為替相場は盛り上がってくると思われますが、実際はそうならない傾向にあります。日本企業の中間決算に向けたリパトリエーションが始まるからです。
また、SELL IN MAYの格言があるため、9月までは慎重に立ち回る投資家が多い傾向にあります。以上の特徴から、9月はドル円が下落しやすいので注意してください。
10月
10月は、10月効果(ハロウィン)というアノマリーが起こる傾向にあります。これは、株価が底をつけやすく、大暴落が起こりやすいといったアノマリーです。これまで説明した通り、為替相場は株式相場の影響を受ける傾向にあります。
10月は為替相場の大暴落に注意しましょう。ポジションを少なくしたり取引ロット数を減らしたりと、いつも以上にリスク管理を徹底することをおすすめします。
11月
11月は、休暇前調整というアノマリーが起こる傾向にあります。これは、ポジション調整によって9月から継続されたトレンドが一旦終わりを迎える傾向にあるといったアノマリーです。そのため、11月になったら一旦所有しているポジションを手放した方がよいでしょう。
なお、月末になるとこれまで発生していたトレンドとは反対のトレンドが発生するといったアノマリーが起こる傾向にあります。資金に余裕がある人は、仕込みの準備をしておいてください。
12月
12月は、欧米の決算時期です。ドルが多く買われて、円安ドル高になる傾向があります。そのため、ドル円は買い目線で戦略を立てておくと成功しやすいでしょう。しかし、12月25日のクリスマスは、各国の株式市場が閉まってしまいます。これに連動して為替相場の動きは鈍くなりやすいので、注意しましょう。
毎月・毎週起こる可能性が高いアノマリーの例
ゴトー日や水曜日スワップなど、FXには毎月・毎週起こる可能性が高いアノマリーも存在します。月曜日の窓埋めや米国雇用統計なども有名です。ここでは、そのような毎月・毎週起こる可能性が高いアノマリーについて説明します。
ゴトー日
ゴトー日とは、数字の5と10が付く日のことです。ドル決済が必要な企業は、ゴトー日に円を売ってドルを購入します。この日はドルが不足しやすいので、金融機関は為替市場からドルを購入して補充します。その結果、ドル円の相場は上昇する傾向にあります。
水曜日スワップ
FXの為替市場が開いているのは、平日のみです。土日分のスワップポイントは、水曜日にまとめて付与する方式を多くのFX取引所が採用しています。この特性を利用して、スワップポイントが付与される時間帯である水曜日の深夜から木曜日の早朝に、多くのトレーダーが高金利の通貨ペアに対して買い注文を出す傾向があります。
高金利通貨ペアのチャートは上昇トレンドが発生しやすいので、買い注文を出しておくと成功しやすいでしょう。
月曜日の窓埋め
FXの相場は、土曜日の早朝に閉まり、月曜日の早朝に開きます。この間に大きな為替変動が発生すると、金曜日の終値と月曜日の始値の間に不自然な空間が生じます。この空間のことを、FXでは窓と言います。
窓埋めとは、この窓を埋めるようにチャートが動く現象のことです。例えば、終値が100円で始値が99円であれば、チャートは上昇する可能性が高いでしょう。窓が開いている場合は、窓が埋まる方向にエントリーをしてみてください。
米国雇用統計
米国雇用統計とは、失業人数や就業人数などのアメリカの雇用情勢を調査した統計のことです。毎月第一金曜日の22時30分(夏時間は21時30分)に発表されます。さまざまな項目が発表されるのですが、「失業率」「非農業部門雇用者数」「平均時給」の3つが特に注目されます。
これらの結果がよいと円安ドル高、反対に悪いと円高ドル安になる傾向があります。米国雇用統計の結果によっては、新たなトレンドが発生するのでよく確認しておきましょう。
ロンドンフィキシング
ロンドンフィキシングとは、ロンドン貴金属市場協会がロンドン時間の午前と午後に金の取引価格を決めることです。日本時間だと午後4時(夏時間は午後3時)と午前1時(夏時間は午後0時)に行われます。
この時間帯は、主に金がドル建てで取引される傾向にあります。値動きが活発になりやすいので、FXで金を扱う人やドルが絡んでいる通貨ペアを扱う人は注意してください。
まとめ
今回は、FXで時々起こるアノマリーについて説明しました。アノマリーとは、理論的根拠があるわけではないが起こる現象のことです。ジャニュアリーエフェクトやSELL IN MAYなど、たくさんあります。
必ず起こる現象ではありませんが、比較的利益を狙いやすいチャンスなのでぜひ取引をして利益を狙ってみてください。しかし、その性質上、予想外の値動きをする可能性も十分にあります。リスク管理は怠らないようにしてください。