「長期保有」と「短期保有」というように、FXの取引スタイルは2種類あります。好きな方で取引をしていこうと説明する人が多いですが、抽象的な答えだとどちらを選択すればよいのか分からない人が多いでしょう。
今回は、その悩みを解決するために長期保有と短期保有の特徴について説明します。「どちらを選択するべきなのか」という明確な答えも用意したのでぜひ参考にしてください。
FXの長期保有とは
FXの長期保有とは、その名の通り、ポジションを長期間保有する投資戦略のことです。組む戦略にもよりますが、数週間〜数ヶ月保有します。長い人だと1年以上保有します。FXはチャート画面から目を離さずに取引するものと考えている人が多いでしょう。
しかし、長期保有は数週間~数ヶ月ポジションを保有するので、頻繁に値動きを確認する必要はありません。忙しい人でも取り組める取引スタイルとして、現在人気を集めています。
FXの長期保有と短期保有の違い
FXの長期保有と短期保有の大きな違いは利益を得る方法です。長期保有は「売買差益」と「スワップポイント」の2つで利益を得られますが、短期保有は「売買差益」でのみ利益を得られます。ここを間違えて取引スタイルを選択すると、理想の取引が実現しなくなる可能性が高いので注意してください。それでは、長期保有と短期保有の違いについて説明します。
長期保有は売買差益とスワップポイントで利益を得る
売買差益のみで利益を狙う短期保有とは違い、長期保有は、「売買差益」と「スワップポイント」の2つで利益を狙います。スワップポイントとは、銀行口座でいう「金利」のようなものです。一定条件を満たし、ポジションを保有していると毎日スワップポイントが投資用口座に振り込まれます。
例えば、1日100円のスワップポイントを得られるとしましょう。通貨を1年長期保有した場合、単純計算で3万6,500円の利益です。ここに売買差益が加わります。
短期保有は売買差益で利益を得る
短期保有とは、その名の通りポジションを短期間しか保有しない投資戦略です。戦略にもよりますが、数秒〜数日保有します。スキャルピングやデイトレードなどを行っている人は、短期保有に分類されるでしょう。
短期売買は、基本的に「為替差益」で利益を得ます。為替差益とは、通貨を売買し、その差額を狙う戦い方です。例えば、通貨を100円で1,000通貨購入したとします。レートが上がり101円で決済しました。この場合、差額の1円×1,000通貨で1,000円の利益を得たことになります。これを積み重ねて数万円、数十万円と大きな利益を狙っていきます。
FXで長期保有した際の利益をシミュレーションしてみた
FXで長期保有をすると、どのくらいの利益が得られるのか実際にシミュレーションしてみましょう。今回は以下の条件でシミュレーションします。
・保有通貨ペア:トルコリラ円
・保有ポジション:10万通貨
・得られるスワップポイント:294円
・毎月50pipsの売買差益を得ると仮定
まず、売買差益で得られる利益を求めます。売買差益の求め方は以下の通りです。
売買差益 = 保有ポジション量 ÷ 得られたpips数
上記の計算式に今回の条件を当てはめると、以下のようになります。
10万通貨 ÷ 50pips = 5万円
今回の条件だと1ヶ月で5万円の利益を得られます。年換算すると60万円です。次は、スワップポイントで得られる利益を求めます。スワップポイント利益の求め方は以下の通りです。
1ヶ月で得られるスワップポイント = 1日で得られるスワップポイント × 30日
上記の計算式に今回の条件を当てはめると、以下のようになります。
294円 × 30日 = 8,820円
1ヶ月で8,820円のスワップポイントを得られます。年換算すると、10万5,840円です。最後に売買差益とスワップポイントを加算しましょう。
60万円 + 10万5,840円 = 70万5,840円
今回の条件だと、1年で70万5,840円の利益を得られることが分かりました。
FXで長期保有するメリット
FXの長期保有で得られるメリットは、「スワップポイントを獲得できる」ことです。「大きな売買差益を狙える」「取引コストを抑えられる」などのメリットもあります。ここではそのような、FXで長期保有するメリットについて説明します。
スワップポイントも得らえる
短期売買はどれだけ長くても24時間以内に決済を終えるので、スワップポイントは得られません。スワップポイントは特定のポジションを24時間以上保有する必要があるからです。それに対して長期保有は最低でも1日以上ポジションを保有します。そのため、売買差益と同時にスワップポイントも得られます。
2つの方法で利益を得られるため、使いこなせば短期保有よりもスピーディーに利益を増やしていけるでしょう。
1回の取引で大きな売買差益を狙える
短期売買では基本的に数pips〜数十pipsの利幅を狙います。一方で長期保有は数十pips〜数百pipsの利幅を狙います。例えば、10万通貨保有しているとしましょう。短期保有だと1回の取引で1,000円〜10万円の利益が狙えます。長期保有だと1回の取引で10万円〜100万円の利益が狙えます。少ない取引で大きな利益が狙えるので、非常に効率のよい取引手法と言えるでしょう。
取引コストを抑えられる
FXで取引する場合、スプレッドがかかります。スプレッドとは、売買する際に発生するコストです。例えば、スプレッドとして1円かかる場合、1円以上の含み益を得ないと利益が発生しません。いかにスプレッドを抑えられるかが利益を得られる鍵となります。このコストは売買する度にかかるので、短期保有だとスプレッドがかさむ傾向があります。
しかし、長期保有は数週間〜数ヶ月に1回しかエントリーしません。そのため、短期保有に比べて長期保有はスプレッドが安く済みます。
取引の手間が省ける
短期保有の場合、チャート画面を頻繁にチェックしなければいけません。スキャルピングを行う場合は、基本目を離せないでしょう。時間があれば問題ありませんが、会社員や主婦・夫などの本業がある人は中々時間を確保できないと思います。
一方で、長期保有はチャートを頻繁に確認する必要はありません。数週間〜数ヶ月を想定した取引なので、細かい値動きを気にする必要はないからです。戦略にもよりますが、1ヶ月に一度しか相場をチェックしない人もいます。
時間がなくてもFXができる
「取引の手間が省ける」の段落でも説明した通り、長期保有はチャートの画面を頻繁に見る必要がありません。寝る前や通学・通勤などの隙間時間を使ってFXができます。実際、午後の休憩時間や洗濯が終わるまでの隙間時間を使って利益を得ている主婦も存在します。一般的に投資は時間がないとできないと言われていますが、FXの長期保有にその考えは当てはまりません。
簡易的な取引環境でOK
短期保有では、細かい分析が必要なので、ある程度の取引環境を整える必要があります。例えば、複数のモニターやハイスペックなパソコンなどです。しかし、長期保有でそのようなアイテムは必要ありません。一般的なスペックのパソコン、または日常使いできるスマートフォンがあれば十分取引できます。「誰でも始めやすい」のは長期保有の魅力でしょう。
FXで長期保有するデメリット
FXで長期保有するデメリットは、「塩漬けのリスクがある」ことです。「スワップポイントを支払わなければいけない場合もある」「ロスカットのリスクがある」などのデメリットもあります。ここではそのような、FXで長期保有するデメリットについて説明します。
塩漬けのリスクがある
塩漬けとは、含み損のままポジションを保有し続けることです。主に悪い意味合いで使われます。塩漬け最大のデメリットは、投資資産を全て失うリスクが潜んでいることです。無計画で塩漬けしているのであれば、なるべく早く損切りしましょう。
人は心理的に含み損が増えるほど、損切りできなくなってきます。すぐ損切りして残りの資産を次の取引に活かした方が、得られるメリットは大きいでしょう。
スワップポイントを支払わなければいけないリスクもある
実は、スワップポイントはもらえるだけではありません。ポジションの保有状況によっては、トレーダーがFX取引所に支払う必要があります。一般的に「売りポジション」を保有すると、スワップポイントを支払わなければいけません。スワップポイントを得たいのであれば、買いポジションを保有しましょう。
しかし、一部例外があります。取引する前にFX取引所の公式サイトを見て、スワップポイントを得られるポジションはどちらなのか確認しましょう。
ロスカットのリスクがある
ロスカットとは、証拠金維持率が一定水準以下になると取引が強制的に終了する制度です。トレーダーの資産を守る目的で執行されます。短期保有に比べて長期保有は大きな値動きに巻き込まれやすい取引手法です。
大きな経済指標や要人発言の影響などを全面的に受けるでしょう。そのため、証拠金維持率は最低でも300%以上を保ってください。300%以上であれば、ある程度の値動きにも対応できます。
ある程度まとまった資金が必要
長期保有は短期保有に比べて資金効率が悪い取引手法です。数週間〜数ヶ月間は資金がロックされるので、少額での取引だとリターンよりもリスクの方が高まります。最低でも、10万円以上あったほうがよいでしょう。
用意できる投資資金が10万円未満なのであれば、レバレッジを活用してください。投資資金が1万円でも、レバレッジを10倍かければ10万円の投資資金があるとみなして取引できます。
FXで短期保有するメリット
FXで短期保有するメリットは、「1回あたりのリスクが小さい」ことです。「資金が少なくても取引できる」「取引に柔軟性がある」などのメリットもあります。ここではそのような、FXで短期保有するメリットについて説明します。
1回あたりのリスクが小さい
長期保有とは異なり、短期保有は1回あたりの取引で得られる利益は少ない傾向があります。現実的なラインで、1〜30pipsが多いでしょう。運がよく50pipsほど取れる場合もありますが、回数はそれほど多くありません。そのようになると、負う可能性がある損失も1〜30pipsほどです。1万通貨で取引すれば、1回の取引で負う可能性がある損失は100円〜3,000円です。
資金が少なくてもトレードできる
短期保有は資金効率がよいので、少額でも問題ありません。実際、数百円のトレードから資産を大きく増やしたトレーダーも存在します。また、レバレッジを使えば資金が少なくても大きな金額で取引できます。いきなり大きなお金を投じるのに抵抗がある人は短期保有からチャレンジしてみましょう。
取引に柔軟性がある
長期保有は、一度エントリーしたらよほどのことがない限り、数週間〜数年ポジションを保有します。これほどまで長くポジションを保有すると、何度も経済指標や要人発言の影響を受けるでしょう。しかし、短期保有は経済発表前・要人発言前にポジションを一旦手放せます。自由にポジションを動かせるのは短期保有最大のメリットと言えるでしょう。
FXで短期保有するデメリット
FXで短期保有をするデメリットは、「取引コストが高くなる」ことです。「FXに時間を取られる」「スワップポイントによる利益を得ることができない」などのデメリットもあります。ここではそのような、FXで短期保有するデメリットについて説明します。
取引コストが高くなる
短期保有で利益を得るのであれば、複数回取引しなければいけません。スキャルピングを行うのであれば、1日で数十回〜数百回取引することになるでしょう。その場合は、取引をする度にスプレッドを支払わなければいけないので、長期保有に比べて支払う取引コストは多くなる傾向があります。短期保有で取引する場合は、取引コストのことも考えて投資戦略を立てましょう。
FXに時間を取られる
短期保有では、そのときの値動きを使って利益を狙っていきます。そのため、チャートを見続ける必要があります。短期保有の中でも取引時間が最も長いデイトレードでも、1〜3時間に1回は取引画面を確認した方がよいでしょう。本業で忙しい人や時間に余裕がない人は、リスクが高くなるので長期保有の方をおすすめします。
スワップポイントによる利益は得られない
短期保有はエントリーから24時間以内にポジションを手放します。どれだけ頑張ってもスワップポイントは得られません。得られるのは売買差益のみです。そのため、長期保有よりも相場分析に力を入れる必要があります。テクニカル分析やファンダメンタルズ分析を使って、相場の動きを予測しましょう。
FXでは長期保有と短期保有どちらがよいのか?
長期保有と短期保有について説明してきましたが、「結局どちらの方がよいのだろうか」と疑問を抱いている人もいるでしょう。FXの世界では長期保有と短期保有のどちらでも利益を出している人がいるので、結論はどちらでも構いません。
しかし、これでは答えになっていないので、「短期保有がおすすめな人の特徴」と「長期保有がおすすめな人の特徴」をこの段落で説明します。
短期保有がおすすめな人の特徴
短期保有がおすすめな人の特徴は以下の通りです。
・少額で取引したい人
・1回あたりのリスクを低くしたい人
・取引に柔軟性を求める人
・小さな利益を積み重ねるスタイルが好きな人
・FX用の時間を確保できる人
短期保有は、比較的低リスク・低リターンの取引手法です。小さな利益を積み重ねていく取引スタイルなので、必然と取引する回数が多くなります。そのため、取引が好きという人にピッタリでしょう。資金効率が高い投資手法でもあるので、少額から始める人にもおすすめです。
長期保有がおすすめな人の特徴
長期保有がおすすめな人の特徴は以下の通りです。
・大きな利益を狙いたい人
・ゆったりとFXをしたい人
・チャートに張り付くのが嫌な人
・売買差益のみならず、スワップポイントでも利益を得たい人
・取引コストを抑えたい人
長期保有は、1回の取引で大きな利益を狙える取引手法です。短期保有のように細かく売買する必要がないので、ゆったりとFXができます。チャートに張り付く必要がないのも長期保有の魅力でしょう。FX中心の生活にならないので、ストレスも溜まりにくいと言えます。スマートフォンが一台あればすぐ始められるのも嬉しいポイントです。
まとめ
今回は、長期保有について説明しました。長期保有とは、ポジションを数週間〜数年間保有する取引手法です。大きな利益を狙えたりチャート画面に張りつく必要がなかったりと、さまざまなメリットがあります。FX用に時間を用意する必要がないので、本業があり忙しい人でも取り組みやすいでしょう。
短期保有に比べて、相場の分析方法も簡単です。レバレッジを活用すれば、少額から始められるので、ぜひチャレンジしてみてください。