有名トレーダーのブログや書籍などを見ていると、必ず「約定」という言葉が出てきます。アナリストや動画配信者が「約定」という言葉を使っているのを、聞いたことがある人もいるでしょう。日常生活では「挨拶」や「礼儀」が大切と言われていますが、これと同じレベルでFXでは「約定」が大切です。損益に直結する言葉でもあるので、意味を理解していない人はこれを機にしっかり理解しましょう。
今回は、FXで使う「約定」について説明します。意味はもちろん、約定に関わる2つのキーワードや注文方法などについても説明するので、参考にしてください。
FXの約定とは
約定とは、簡単に説明すると「FXの取引(売買)が成立すること」です。FXでは「注文を約定する」といった言葉で表現されます。また、注文が約定することを「フィル」や「執行済み」と呼ぶこともあるので、合わせて覚えておきましょう。
FXでは、国内外に関わらず注文が約定すると、あとからそれを取り消すことができなくなります。ただし、逆指値で指定している価格に到達していないものは未確定の注文として扱われるので、あとから注文を取り消すことができます。
もし、約定した取引を終了したい場合は「決済」の注文を出しましょう。ただし、状況によっては約定しない場合もあります。注意してください。約定しないケースについては、後ほど説明します。
FXの約定に関わる2つのキーワード
FXの約定について理解するためには、2つのキーワードを押さえておく必要があります。1つ目は「約定力」、2つ目は「スリッページ」です。これらは、FXの勝率を左右する大切な要素です。2つのキーワードを理解せずに取引を始めると、トラブルに悩まされる可能性があるので十分注意しましょう。
約定力
約定力とは、「注文を確定させる力」のことです。例えば、価格が100円のときに買い注文を出したとしましょう。通常であれば、そのまま注文が通るので、100円の買いポジションを持つことができます。しかし、まれに100円で買い注文を出したのにも関わらず、100.20円で注文が約定する場合があります。このようなFX取引所は、トレーダーの中で「約定力が弱い」と言われます。
基本的に約定力が弱いFX取引所を利用するメリットはありません。希望通りの価格でポジションを持てないので、負ける確率が高まるからです。そのため、FXの勝率を少しでも高めたいと考えているのであれば、なるべく「約定力が強いFX取引所」を選ぶようにしましょう。具体的には、「取引高が高く、幅広い金融商品を取り扱っている」FX取引所を選ぶことをおすすめします。
約定力について詳しくはこちらをご参考ください。
>FXの約定力とは?約定との違いや注意点、トレーダーができる対処法などを解説
スリッページ
先ほどの約定力の段落で、「100円で買い注文を出したのにも関わらず、100.20円で注文が約定する場合がある」と説明しました。スリッページとは、この注文と約定の間に生まれる価格差のことです。今回の例であれば、「20銭のスリッページが生まれた」と表現します。
スリッページが起こる原因は、「タイムラグ」です。FXでは、「トレーダーが注文を出す→FX取引所が注文を承諾する→約定」という流れで注文が通ります。素早く注文を処理してくれますが、どうしても注文から約定までタイムラグが生じます。このときに為替が変動すると、スリッページが起こります。スリッページは、為替の動きが激しいときに起こりやすい現象です。そのため、経済指標が発表される時間帯や取引量が少ない朝型にFXをする際は十分注意しましょう。
スリッページについて詳しくはこちらをご参考ください。
>スリッページとは?発生する理由や7つの対策方法、3つの注意点を解説!
FXで約定しないケース
注文が約定しないと、ポジションを持つことができないので、トレードができません。約定力の強さはFX取引所によって異なりますが、いくつかの想定されるケースがあります。よくあるのは、急激なレート変動による「注文不成立」のケースです。
例えば、ドル円の現在価格が100円のときに、「価格が101円になったタイミングで買い注文を入れる」という指値注文を出したとしましょう。しかし、為替相場はいつ何が起こるかわかりません。急激な為替変動によって、価格が102円まで上昇してしまう場合もあります。このような状況で、指値注文通りに約定することはほぼないでしょう。場合によっては、注文自体が不成立になってしまうこともあります。その場合は未約定として、注文が削除されます。
約定するためには、一定のパラメーターを超える必要があります。市場で十分な取引量を確保することも必要ですし、そもそも取引をする人がいなければ取引自体が成立しません。以上のように注文は、FXの取引時間内であることや取引期限を迎えていないことなど、さまざまな要因によって約定するかどうかが決まります。
約定に必要な注文方法について
FXでは、ポジションが自動で約定するわけではありません。約定させるためには、まずトレーダーが注文を出す必要があります。しかし、一口に注文といっても、さまざまな種類があります。それぞれを使いこなし、相場の状況・戦略に合わせた注文を出せるようになりましょう。それでは、各注文方法の詳細を説明します。
成行注文
成行注文とは、現在値での約定を希望する際に使う注文方法です。例えば、現在のドル円の価格が120円だとしましょう。この価格でポジションを保有したいと考えた場合は、成行注文を出します。すると、その瞬間に約定され、120円でドル円のポジションを保有できます。成行注文のメリットは、以下の通りです。
・すぐポジションを持つことができる
・相場の変化に素早く対応できる
・取引処理の優先度が高く、予約注文よりも約定しやすい
最大のメリットは、「相場の変化に素早く対応できる」ことです。そのため、成行注文は数秒単位で取引を行うスキャルピングで活躍します。相場の雲行きが怪しいと感じた場合は、ポジションをすぐ手放せるので、損失を最小限に抑えやすいでしょう。一方で、以下のようなデメリットがあります。
・スリッページが起こりやすい
・注文の取り消しができない
・ゆっくりと注文できないため、注文ミスが起こりやすい
指値注文
指値注文とは、約定する価格を予め指定する注文方法です。予約注文と言われることもあります。例えば、現在のドル円は100円ですが、99.50円でポジションを持ちたいとしましょう。このとき、「価格が99.50円に達したタイミングで買い注文を入れる」と予め仮注文(指値注文)を入れます。
チャートが下落し、ドル円は99.50円になりました。99.50円になると、システムが起動し、自動で買い注文をFX取引所のサーバーに出してくれます。その注文が承諾されれば、99.50円で買いポジションを保有できるという仕組みです。指値注文のメリットは以下の通りです。
・条件を満たせば、自動で注文を出してくれるため、注文の忘れを防げる
・スリッページが起こりにくい
・注文を後からキャンセルできる
デメリットは、以下の通りです。
・条件を満たさない限り、注文は約定しない
・機会損失が生まれる場合がある
・相場の変化に柔軟に対応できない
逆指値注文
逆指値注文とは、現在よりも不利な価格で注文を出す際に使う注文方法です。主に損切り(含み損が出ている状態でポジションを手放すこと)で使われます。例えば、ドル円を100円のタイミングで購入(買いポジション)したとしましょう。逆指値注文は、99円で出しました。
少し時間が経ち、相場を見てみると、状況が一変し、チャートは下落してきました。その後、ついにチャートは99円に達します。この瞬間、逆指値注文が入り、持っていたドル円の買いポジションは自動で決済されます。デメリットしかないように思える逆指値注文ですが、実は以下のようなメリットがあります。
・損失が膨らむのを防げる
・画面を頻繁に確認せずとも、リスク管理ができる
・スキャルピングからスイングトレードまで、幅広い取引手法・戦略で使えるため、汎用性がある
デメリットは以下の通りです。
・損失が確定する
・相場の状況に合わせて、柔軟に対応することはできない
IFD注文
IFD(アイエフディー)注文とは、新規注文と決済注文を同時に出したい場合に使う注文方法です。例えば、ドル円の現在値は100円だとしましょう。IFD注文を使い、101円で購入、チャートが102円に達したタイミングで決済という予約注文を出しました。この時点では、「購入の予約注文」のみ有効です。
チャートが上昇し、ドル円の価格は101円になりました。ここで購入の予約注文が本注文に変わり、約定されます。購入注文が確定すると、102円の決済予約注文が有効に変わります。その後、チャートがさらに上昇し、ドル円の価格が102円になると決済注文が約定され、利益を獲得できます。IFD注文のメリットは以下の通りです。
・予約注文を出しておけば、自動で取引が完了する
・相場を頻繁に確認する必要がない
・本業とFXを両立しやすい
デメリットは以下の通りです。
・為替が動かない限り、注文は約定しない
・別の取引チャンスを逃すこともある
OCO注文
OCO(オーシーオー)注文とは、2つの注文を同時に出すことができる注文方法です。例えば、ドル円を100円のときに購入(買い)したとしましょう。このとき、OCO注文を使えば、利益確定をしたい価格と損切りをしたい価格の2つを設定できます。
今回は利益確定を101円、損切りを99円に設定しました。チャートは読み通り上昇し、101円になりました。この場合は、利益確定の予約注文が入るので、買いポジションは101円で決済されます。利益確定の注文が約定したので、損切りの注文は自動的にキャンセルされます。OCO注文のメリットは、以下の通りです。
・利益確定と損切りの設定を一度にできるため、取引が楽
・リスクをコントロールできる
・相場が急激に変動したとしても安心
デメリットは以下の通りです。
・スリッページが起こる可能性がある
・多少、相場を読む力が必要
・リスクとリターンの割合を考えずに注文を出すと、FXで勝つのが難しくなる
IFO注文
IFO(アイエフオー)注文とは、IFD注文とOCO注文を組み合わせた注文方法です。新規注文・利益確定注文・損切り注文と、一度に3つの注文を出すことができます。例えば、ドル円の現在値は100円だとしましょう。IFO注文を使い、101円で新規購入、103円で利益確定、100.50円で損切りと数値をセットしました。このように予約をセットしておけば、指定の価格にチャートが達したタイミングでそれぞれの注文が約定されます。
決済注文に関しては、指値注文または逆指値注文のどちらかが約定すると、もう一方は自動でキャンセルされます。IFO注文のメリットは、以下の通りです。
・新規注文から決済注文まで、すべてを自動化できる
・リスク管理もできるため、安全な取引ができる
・細かくリアルタイムで相場を確認する必要がない
デメリットは以下の通りです。
・チャートが指定の価格に達さない限り、注文は約定しない
・スリッページが起こる可能性がある
約定力の高いFX業者を選ぶべき人とは
約定力とは、注文した価格で約定する力を数値化したものです。現在は、たくさんのFX取引所が存在しますが、その中でも処理能力が高いサーバーを保有していて、金融機関と数多くのつながりを持っている業者は「約定力が強い」傾向にあります。
初めから約定力を意識して、FX取引所を選ぶFX初心者は、少ないでしょう。実際、後から約定力が損失に関係することを知り、慌てて見直す人がほとんどです。では、FX取引を行ううえで、どのようなトレーダーは約定力を意識したほうがよいのでしょうか。答えは、2パターンあります。
・取引回数が多い手法でFXをしている人
・短期間で売買を繰り返すスキャルピングやデイトレードでの取引を考えている人
短期間で何度も売買を繰り返す取引手法では、約定までのスピードが非常に大切です。1秒遅れただけでも、かなりの損失につながる場合があるので注意してください。また、相場の急激な変動にも素早く対応できません。以上の理由から、スキャルピングやデイトレードなどを行う人は、約定力の高いFX取引所を選んだ方がよいでしょう。
まとめ
今回は、FXの約定について説明しました。約定とは、トレーダーが出した注文が確定することです。例えば、買い注文を出し、それがFX取引所に承諾されれば、「買い注文が約定した」と言います。約定について理解する際は、合わせて「約定力」と「スリッページ」も覚えておきましょう。
約定力とは「約定する力を数値化したもの」で、スリッページとは注文と約定の間に生まれる価格差のことです。これらは、勝率に直結する大切な要素です。なるべく勝率の高い取引を行いたいのであれば、約定力が強くてスリッページが起こりにくいFX取引所を選びましょう。