成行注文や指値注文など、FXにはさまざまな注文方法があります。どの注文方法を使えばよいのか悩むかと思いますが、FX初心者はまず代表的な「成行注文」「指値注文」「逆指値注文」の3つから手をつけてみましょう。特に「成行注文」に関してはシンプルな取引手法なので、1日あればマスターできると言えます。
それでは、FXの代表的な3つの注文方法について説明します。
成行注文とは
成行注文とは、現在のレートで購入・空売りする注文方法です。しかし、注文を出してから約定するのは、注文がFX取引所のサーバーに届いてからです。注文から約定まで多少の時間差が生まれるので、相場の動きが激しいと注文時の表示価格と約定価格が異なる場合があります。これをスリッページと言います。スリッページしやすいFX取引所もあるので注意しましょう。
成行注文のメリット
成行注文のメリットは、「やり方がシンプルで分かりやすい」ことです。「約定までが早い」「柔軟に対応できる」などのメリットもあります。ここではそのような、成行注文のメリットについて説明します。
やり方がシンプルで分かりやすい
成行注文は、現在の価格で通貨を売買するので、直感的で分かりやすいのが特徴です。自分で価格を指定する必要もないので、誤発注を防げます。成行注文でやるべきことは、「チャートは今後上がるのか・下がるのか」を予測して、ロット数を決めるだけです。それ以外のことを考える必要はないので、FX初心者でもやりやすいでしょう。
考えることが多いと注文が遅れるのでチャンスを逃す可能性がありますが、成行注文ではそれも防げます。成行注文は、「スピーディーに取引したい」「手軽に取引したい」と考えている人におすすめです。
すぐ約定できる
FXでは、トレンドに乗って利益を得るのがセオリーです。そのトレンドが発生している場合、なるべく早くエントリーした方が多くの利益を得られます。損失を最小限に抑えるために損切りする際も決済は早い方がよいでしょう。
予想が外れて相場が逆行し、含み損が雪だるま式に増えていっても、成行注文ですぐ決済できれば一発退場する確率は低くなります。いずれにしても「すぐエントリー・決済できる」のは成行注文の強みです。
柔軟な対応ができる
人によっては、条件を設定してエントリー・決済を自動化させているでしょう。確かに自動化させると取引が非常に楽になります。しかし、チャートが急変した場合、対応できません。改めて口座残高を見たら、投資資金が半分以下になっていたというケースも珍しくありません。
成行注文はその場の判断でエントリー・決済ができるので、どのような相場状況になっても瞬時に対応できます。
成行注文のデメリット
成行注文のデメリットは、「取引の回数が限定的になる」ことです。「スリッページのリスクがある」「感情に左右されやすい」などのデメリットもあります。ここではそのような、成行注文のデメリットについて説明します。
取引の回数が限定的になる
成行注文は、その場でエントリー・決済する注文方法です。条件を出して予約することはできません。常にチャートを見ている必要があるので、睡眠中や外出中は取引チャンスを逃す場合があります。希望の価格があっても条件設定ができないために、不利な条件で取引せざるを得ないケースもあるでしょう。
このように約定のタイミングや価格の指定などをできないのは、成行注文最大のデメリットです。FXの時間をあまり取れない人は、他の注文方法を使いましょう。
スリッページのリスクを負う
スリッページとは、注文から約定までの間に発生する相場変動のことです。例えば、100円で注文を出したとしましょう。しかし、約定するまでの間に相場が変動し、100.001円で約定しました。このように価格差が生まれたときに「スリッページが発生した」と言います。
成行注文は具体的な価格レートの数値が含まれません。そのため、実際にいくらで約定するのか分かりづらい傾向があります。対策として挙げられるのは、スリッページの許容範囲を設定することです。これを設定しておけば、スリッページが設定数値を超えた際に約定を自動でキャンセルしてくれます。
感情に左右されやすい
安定的に利益を得ていきたいのであれば、感情に左右された取引は控えなければいけません。しかし、成行注文ではそれができなくなる可能性があります。リアルタイムでエントリー・決済をしていくからです。
そのタイミングでイライラしていればリスクの高い取引をする可能性が高いでしょう。落ち込んでいれば、せっかくのチャンスを深く考えて見逃してしまうかもしれません。予約注文は約定前であれば、注文を取り消しできます。しかし、成行注文でそれはできません。やり直しが効かないので、しっかり考えてからエントリー・決済をしましょう。
指値注文(リミット注文)とは
指値注文とは、あらかじめ予約した価格にレートが達したら売買注文が執行される注文方法です。予約注文とも呼ばれています。指値注文は、リアルタイムの価格を元にするわけではありません。今後価格が上がるのか、下がるのかを予測する力が求められるので、テクニカル分析の知識も必要になります。
指値注文は「決済」でも使えます。必ず「現在よりも有利な価格」を指定するようにしましょう。
指値注文のメリット
指値注文のメリットは、「チャートを見続ける必要がなくなる」ことです。「有利な条件で取引ができる」「感情に左右されにくい」などのメリットもあります。ここではそのような、指値注文のメリットについて説明します。
常にチャートを見る必要がない
指値注文を使えば、事前に売買予約ができます。成行注文のようにチャートに張り付く必要はありません。外出中や睡眠中でも売買が自動で行われるので、精神的・肉体的なストレスは減るでしょう。予約型の注文方法なので、FXの時間をあまり確保できない人にもおすすめです。指値注文は、「利益確定」のときに使うのがおすすめです。
有利な条件で取引できる
成行注文だと、限られた時間の中でベストなポイントを見つけなければいけません。スムーズに見つかればよいですが、相場は不規則に動いているので中々見つからないこともあります。エントリーポイントを探しているのに中々見つからないと、焦りから好ましくない場所でエントリー・決済する場合もあるでしょう。それだと、勝率は低くなります。
高い勝率を維持したいのであれば、ベストな場所でエントリー・決済しなければいけません。それを可能にしてくれるのが、指値注文です。常にベストな場所でエントリー・決済できるので、計画通りの取引ができるでしょう。指値注文を上手く使えば、取引に「安心感」を得られます。
感情に左右されにくい
成行注文のデメリットとして、「感情に左右されやすい」点を挙げました。しかし、指値注文であれば、冷静なときに注文・決済予約を出せるので、感情に左右されず取引ができます。感情的になって出した予約注文も約定前であれば取り消せるので、事前に失敗のリスクを回避できます。
「無駄な注文が減った」「資金管理の計画性が高まった」などの声もあるので、成行注文で上手くいかない人は一度指値注文を使ってみてください。
指値注文のデメリット
指値注文のデメリットは、「取引のチャンスを逃すリスクがある」ことです。「予想外の注文が入る場合がある」「分散決済ができない」などのデメリットもあります。ここではそのような、指値注文のデメリットについて説明します。
取引のチャンスを逃すリスクがある
指値注文は、予約した価格にレートが達しない限り、約定しません。よいことでもあるのですが、取引チャンスを逃す場合もあります。例えば、100円で売りの指値注文を入れたとしましょう。チャートは99.7円まで上昇した後、大きく下落していきました。予想は合っていましたが、100円に達していないので今回は「未エントリー」となります。
対策方法として有効なのは、無謀な価格での予約は出さないことです。また、本命の価格の少し手前に低ロットでいくつか指値注文を入れておくのもよいでしょう。100円での注文が本命なのであれば、99.7円と99.5円に軽いロットで予約注文を入れておくというイメージです。
予想外の注文が入る場合がある
指値注文は、予約条件が満たされない限り約定しません。有効期限もないので、自分で消去しない限り、永遠に残り続けます。忘れたころに前の予約注文が約定するケースもあるでしょう。この注文を戦略に入れていなかった場合、予想外の注文になるので一気に戦略が崩れます。また、過去の予約注文が現在ベストとは言い切れません。
いずれにせよ、予想外の約定はトレーダーにとってメリットがありません。この状況を防ぐために、過去の予約注文を見返し、定期的に整理しましょう。
分散決済ができない
成行注文は分散決済ができますが、指値注文は分散決済ができません。大きなポジションを持つ場合は気を付けてください。一度に全てのポジションを手放すのは大きなリスクを伴うからです。対策として挙げられるのは、「あらかじめ分散させる」ことです。一度に10ロットの注文を出すのではなく、2ロットの予約注文を5回に分けて出せばリスクを分散できます。
逆指値注文(ストップ注文)とは
逆指値注文とは、現在よりも不利な価格を指定する予約注文です。ストップオーダーとも呼ばれています。例えば、買いでエントリーするとしましょう。その場合は、安く買うために指値注文を入れます。しかし、価格が安くならないままチャートが上昇するケースもあるでしょう。
その場合は、「調整は入らずこのまま上昇トレンドが続くだろう」と予測できます。ここで使うのが逆指値注文です。少し割高にはなりますが、現在よりも少し高い値段で予約注文を出すことで、トレンドに乗り過ごしてしまうことを防げます。
逆指値注文のメリット
逆指値注文のメリットは、「取引のチャンスを逃しにくい」ことです。「損切りで悩まなくなる」といったメリットもあります。ここではそのような、逆指値注文のメリットについて説明します。
取引のチャンスを逃しにくい
相場は自分の戦略通り動く訳ではありません。もう少し安くなったら買いたいと思っていても、さらに上昇していく可能性もあります。指値注文だと、約定しないのでチャンスを全て逃すことになりますが、逆指値注文であれば割高になってもチャンスを掴めるので、少しの利益を得られます。
得られる利益があるのであれば、少しでも得ていた方が今後戦いやすくなるでしょう。むしろ、相場の動きを確認した上で予約注文を出せるので、指値注文よりも勝率は高くなる場合があります。
損切りで悩まなくなる
逆指値注文は、主に「損切り」で使われます。例えば、現在100円でポジションを持っているとしましょう。利益が青天井で伸びるのは嬉しいですが、損失が青天井で伸びるのはあまり嬉しくありません。だからといって、画面に長時間張り付く訳にもいきません。
そこで役立つのが、逆指値注文です。あらかじめ損切りの予約注文を入れておけば、損失に怯えず他の作業ができます。多額の損失も防げるので、逆指値を使えば負けにくくなるでしょう。
逆指値注文のデメリット
逆指値注文のデメリットは、「約定する価格の優位性が低い傾向にある」ことです。「機会損失が生まれる」といったデメリットもあるので、注意してください。ここではそのような、逆指値注文のデメリットについて説明します。
約定する価格の優位性は低い傾向にある
逆指値は現在よりも不利な条件で約定するという特性を持っています。約定する価格のよさは成行注文や指値注文には敵いません。対策として有効なのは、分散エントリー・決済です。資金を複数に分けて、まずは成行注文でエントリーや決済を済ませます。そして、残りの資金を使って指値注文や逆指値注文を出します。
このようにすれば、どちらに転んでもある程度安定した利益が期待できます。
機会損失が生まれる
予約注文全般に当てはまることですが、予約した価格に達さなければ注文が通らないため、成行注文に比べて機会損失の可能性が高くなります。しかし、逆指値注文は現在よりも不利な条件で注文を出す方法なので、仮に約定しなくても大きな損失は出ないでしょう。最も困るのは、「ダマシ」です。
ダマシとは、一瞬よい方向にチャートが進むと見せかけて、すぐ悪い方向に進むチャートの動き方です。これにひっかかると雪だるま式に含み損が増えていきます。予約注文だからと過信せず、定期的に注文の状況を確認するようにしましょう。
まとめ
今回は、FXでよく使われる人気の注文方法をまとめました。「成行注文」「指値注文」「逆指値注文」と3つの注文方法を紹介しましたが、全てマスターする必要はありません。自分の戦略や取引スタイルにあった注文方法を選び、それを極めれば勝率を高められます。
まずは、成行注文のような簡単な注文方法から試し、徐々に難易度が高い注文方法へと移行していくとよいでしょう。