約定力は、FX取引をする上で重要なポイントの一つです。今回は、約定力の基礎知識や約定力の強さのメリット・デメリット、そして注意点や約定力を強くするために投資家ができることなどを解説します。
約定力の基礎知識
まずは、約定力の基礎知識について覚えましょう。
約定力とは
約定力とは、注文が通るスピードと正確さのことです。例えば、米ドル/円が100円のときに1万通貨分の買い注文を入れたとします。このとき、1万通貨分の注文が1秒で全て通った場合は、約定力が強いと判断できます。
反対に、1万通貨分の注文が30秒で通った場合、前者に比べて約定力が弱いと判断できます。そのため、ストレスなく海外FXで取引をしたい場合には、約定力が強い取引所を選びましょう。
約定と約定力の違い
「約定」と「約定力」は似た言葉ですが、意味が異なるので注意しましょう。
約定とは、注文が成立したことです。例えば、1万通貨の買い注文を出し、その注文が成立した場合、「1万通貨分約定した」と言います。
約定力とは、注文を成立させる力です。つまり、先ほど説明した「注文が通るスピードと正確さ」のことです。
取引所によって約定力が異なる理由
約定力は、取引所によって異なります。なぜなら、各取引所によって導入しているシステムが異なるからです。スペックが低いシステムを導入していれば約定力は弱くなりますし、スペックが高いシステムを導入していれば約定力は強くなります。
約定力が強い場合のメリット
約定力が強いことのメリットを3つ紹介します。
スリッページが少ない
スリッページとは、「注文した価格」と「実際に注文が通った価格」がズレることです。例えば、価格が100円のときに注文を出したのに、100.005円で注文が通った場合、「5銭のスリッページが発生した」と言います。スリッページが多いと思わぬ損失を負う可能性が高くなるので、注意しましょう。
スプレッドが狭くなる
スプレッドとは、買値と売値の間に生じる「価格差」のことです。スプレッドの幅はさまざまな条件で決まりますが、約定力が強い取引所はスプレッドが狭い傾向にあります。スプレッドの幅が狭ければ、その分、売買差益を得やすいので、利益を得られる確率が高くなります。
思い通りのトレードができる
約定力が弱いとスリッページの発生頻度が高く、スプレッドも広くなりやすいので、思い通りのトレードができなくなります。例えば、通貨を100円で購入したいのに、100.003円で注文が入ったら、戦略が崩れてしまいます。
また、決済時もスリッページが発生すれば、得られるはずだった利益も得られません。約定力が弱い取引所での取引では、積み重なるズレにより、冷静な取引ができなくなる可能性があります。約定力が強い取引所で取引しましょう。
約定力が弱い場合のデメリット
約定力が弱いことのデメリットを2つ紹介します。
思わぬ損失を負うリスクがある
約定力が弱いと、スリッページの頻度が高くなると同時に、スプレッドも開きやすくなります。そうなると、的確な箇所でエントリー・決済できなくなります。損切りのタイミングもスリッページが原因で遅れれば、想定以上の損失を負う恐れがあるので注意が必要です。
投資シナリオが崩れる
例えば、100円でエントリーして100.005円で利益確定するという投資戦略を立てていた場合、戦略通りいけば5銭の利益が得られます。しかし、スリッページが発生し、注文は100.003円で通りました。この場合、最大でも2銭しか利益が得られません。
この状況であればまだ利益が得られるのでよいですが、状況によっては100.006円で注文が通る場合もあります。このようになると、一気に投資シナリオが崩れるので、思い通りの取引ができなくなります。特に、小さい利益を積み重ねるスキャルピングを行う方は、このような事例が発生する恐れもあるので注意しましょう。
約定力に関する注意点
約定力に関する注意点を4つ紹介します。
約定力と約定スピードは比例しない
約定スピードとは、注文ボタンを押してから約定までの時間のことです。約定力と約定スピードは異なるので、約定力が強くても約定スピードが遅い場合もあります。
反対に、約定スピードが速くても約定力が弱い場合もあります。そのため、約定力と約定スピードは、全く違うものとして判断しましょう。
約定力は通貨ペアで異なる
約定力は取引所が導入しているシステムによって異なると説明しましたが、それ以外にも約定力は通貨ペアによって異なります。このとき、カギとなるのは「通貨ペアの流動性」です。流動性とは、その通貨ペアはどれだけ活発に取引されているかを表すものです。
一般的に米ドル/円やユーロ/ドルなどの流動性が高い通貨ペアは約定力が強く、トルコリラ/円やメキシコペソ/円などの流動性が低い通貨ペアは、約定力が弱い傾向があります。そのため、強い約定力が求められるスキャルピングを行う時は、なるべく流動性が高い通貨ペアを選びましょう。
約定力は取引する状況で異なる
例えば、市場オープン時や重大な経済指標発表前後は、通貨を売買するトレーダーが増えるためサーバーに大きな負荷がかかり、通常の取引状況と異なってきます。
そうなると、ひとつの注文を通すスピードが若干遅くなるので、約定力が通常よりも弱くなる傾向があります。そのため、売買が活発になる時間帯は、スリッページを考慮して戦略を立てた方がよいでしょう。
スリッページをゼロにはできない
基本的に、スリッページはゼロにできません。なぜなら、注文から約定まで少し時間があるからです。そのため、どれだけ約定力が強くても毎回完全に希望通りの価格で注文が通るということはありません。
約定力の強さは、スリッページの起こりにくさを表すものです。希望価格で通ることを保証するものではないので覚えておきましょう。
約定力を高めるためにトレーダーができること
約定力を高めるためにトレーダーができることを6つ紹介します。
約定力が高い取引所を選ぶ
約定力が高い取引所を選ぶことが重要です。必ずFX取引所の約定力を事前にチェックしましょう。可能であれば、デモトレードで実際の約定力を確認してみてください。トレードを体験してみて問題ない範囲であれば、その取引所で本口座を開設しましょう。
専用のサーバーを設置してスペックが高いパソコンを使う
約定力の強さは、取引所のシステムでも左右されますが、お使いのサーバーや端末でも左右される場合があります。そのため、古いサーバーやパソコンを使っている方は、快適に取引するために買い替えを検討してみましょう。
起動させるアプリやソフトを少なくする
起動させているアプリやソフトが多いと、端末の動作が遅くなります。特にチャート関係のソフトはひとつひとつの容量が大きいので、端末によっては数個開いただけでフリーズする場合があります。
そのため、取引はスマホで、チャート分析はパソコンといった風に、役割を分けられる人は分けましょう。しかし、端末がひとつしかない場合は、最低限のアプリ・ソフトだけを起動させて、動作を軽くしましょう。
取引ロット数を少なくする
取引ロット数が多いほど処理に時間がかかるので、約定力が弱くなります。取引所にもよりますが、大体50lotを超えると約定力は弱くなる印象です。
そのため、大きなロットで取引したい場合は、25lotの注文を2つ出すというように、分散して注文を出してみると良いかもしれません。
相場が荒れているときは取引を避ける
相場が荒れていると、1秒間でもチャートがかなり動きます。そのため、どれだけ約定力が強い取引所でも、相場が荒れているときはスリッページが起こりやすくなります。
基本的に相場が荒れているときは取引を控える方が安全ですが、どうしても取引する場合は、注文時にスリッページの許容範囲を設定しましょう。
朝方の取引は避ける
FXの大きな市場は「東京市場・ロンドン市場・ニューヨーク市場」の3つです。しかし、5時~9時までは大きな市場が開いていないので、流動性が低くなります。そうなれば、約定力は弱くなりやすいので注意しましょう。
約定力が強い取引所を選び有利にトレードを進めていこう
今回は、FXの約定力について解説しました。約定力とは、注文が通る速さと正確さのことです。約定力が強いとスリッページが起こりにくく、スプレッドが狭いため、有利なトレードができます。
しかし、約定力が弱いと不利なトレードになって、負ける確率が高くなります。約定力の強さは、取引所がサイトに記載していることが多いので、必ず確認しましょう。サイトに記載されていない場合は、一度デモトレードで約定力を試すことをおすすめします。