FXの取引画面には、さまざまな証拠金が表示されます。「証拠金」「必要証拠金」「有効証拠金」「余剰証拠金」の4つです。どれもFXでは欠かせない項目なので、覚えておきましょう。しかし、「証拠金とは何なのだろうか」と疑問を抱いている人もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、4つの証拠金の意味や計算方法などについて説明します。証拠金と密接な関係にある「証拠金維持率」や「強制ロスカットを防ぐ方法」などについても言及するので、大きな損失を負うのを避けたい人はこちらも参考にしてください。
FXにおける証拠金とは
証拠金とは、FXを行う際に必要な「資金担保」のことです。例えば、30万円分の取引をしたいと思っているトレーダーがいるとしましょう。このトレーダーの口座残高は10万円です。通常、この状態で30万円分の取引はできません。しかし、FXでは取引総金額の4%の資金があれば、30万円分の取引ができます。30万円分の4%なので、必要な資金は1万2,000円です。この1万2,000円のことを「証拠金」と言います。
「FXは少ない資金から始められる」、「少ない資金で大きな利益を狙える」と言われていますが、これはこのような仕組みがあるからです。そのため、1〜10万円の投資資金があれば、比較的不自由のない取引ができるでしょう。
証拠金維持率とは
証拠金維持率とは、現在の口座残高にどれほどの余裕があるのかを示した指標です。証拠金維持率が低くなると、強制ロスカットが発動します。強制ロスカットとは、現在行っている取引を強制的に終了するシステムです。強制ロスカットが発動するタイミングは、利用するFX取引所によって異なります。詳細は、FX取引所の公式サイトを確認してください。
証拠金維持率は、現在の取引状況を把握する上で欠かせない要素です。定期的に割合をチェックし、危険な取引になっていないか確認しましょう。証拠金維持率の理解をより深めたい人は、以下の言葉も覚えておくことをおすすめします。
・有効証拠金:取引で使える証拠金の総額
・必要証拠金:取引に投じた資金
証拠金維持率の仕組み
証拠金維持率は、常に一定ではありません。保有するポジションの量と日々の値動きで変動します。証拠金維持率は、なるべく高い水準を維持しておきましょう。そのトレーダーの考え方や取引スタイルなどにもよりますが、100〜200%以上を維持しておくことが推奨されています。
より安全に取引したい人は、300%以上を保ってください。証拠金維持率が低くなってきた場合は、以下の方法を実践して水準を高めましょう。
・口座に追加入金をする
・保有しているポジションの量を減らす
・両建て(同じ通貨ペアで買いと売り、両方のポジションを持つこと)を行う
証拠金維持率の計算式
証拠金維持率は、以下の計算式で求められます。
証拠金維持率 = 有効証拠金 ÷ 必要証拠金 × 100
例えば、投資用口座に30万円あり、5万円の含み損が発生しているとしましょう。この場合、以下の計算式が成り立ちます。
25万円 ÷ 30万円 × 100 = 83
この場合の証拠金維持率は83%です。100%以下なので、少し危険な取引をしていると判断ができます。逆に10万円の含み益が出ていると仮定して計算してみましょう。
40万円 ÷ 30万円 × 100 = 133
この場合の証拠金維持率は、133%となります。100%以上なので安全と言えるでしょう。
必要証拠金とは
必要証拠金とは、ポジションを購入するために必要な資金のことです。例えば、50万円分のポジションを保有したい場合は、50万円(必要証拠金)を用意する必要があります。しかし、実際は50万円も用意する必要はありません。後ほど説明しますが、FXには「レバレッジ」と呼ばれるシステムがあるからです。
このレバレッジを上手く活用すれば、数千円〜数万円の口座残高でも数十万円〜数百万円分の取引ができるようになります。低リスクでFX取引ができるので、気になっている人はぜひチャレンジしてみてください。
必要証拠金の計算式
FX取引を行う際の必要証拠金は、以下の計算式で求めることができます。
現在の為替レート × 購入通貨数 ÷ レバレッジ数 = 必要証拠金
例えば、1ドル100円のドル円を、レバレッジ25倍で1万通貨分購入したとします。その場合、以下の計算式が成り立ちます。
100円 × 1万通貨 ÷ 25(レバレッジ)= 4万円
上記の条件でドル円を購入する場合、4万円の必要証拠金を用意しなければいけないということが分かります。また、通貨を購入する際は、基本的に買い注文の場合でも売り注文の場合でも、それぞれの必要証拠金を用意する必要があるのでご注意ください。
必要証拠金の仕組み
必要証拠金の仕組みは以下のようになっています。
1. 証拠金として預けた金額をFX会社が確認する
2. FX取引所からFX上の資金を借り入れる
3. トレーダーが通貨購入の注文を入れる
4. FX会社が通貨購入分の必要証拠金を計算する
5. (必要証拠金が足りた場合)注文完了
6. (必要証拠金が不足している場合)注文拒否
必要証拠金とレバレッジ
FXでは、基本的に必要証拠金以上の通貨を購入することはできませんが、レバレッジを活用すれば必要証拠金以上の通貨を購入できます。レバレッジとは、預けている資金を担保に取引額を自己資金以上に引き上げることです。例えば、10万円の証拠金で100万円分の通貨を購入しようとします。
レバレッジをかけなければ購入することはできませんが、10倍のレバレッジをかけると購入が可能になります。つまり、以下のような計算式になります。
100万円 ÷ レバレッジ10倍 = 10万円(必要証拠金)
仮に100倍のレバレッジをかけた場合、1万円の必要証拠金で100万円分の取引が可能になります。損失にもレバレッジがかかるため、悪いイメージを持たれる傾向にありますが、取引を有利に進める武器にもなり得ます。そのため、上手く活用して効率よく利益を得ていきましょう。
レバレッジについて詳しくはこちらをご参考ください。
>少ない資金で利益拡大!?FXのレバレッジとは?計算方法や制限もご紹介
有効証拠金とは
有効証拠金とは、FX取引をする際に使える証拠金の総額です。分かりやすく説明すると、証拠金と含み損と含み益を合わせた合計金額のことです。例えば、10万円の証拠金があるとします。5万円の利益が出ている場合の有効証拠金は15万円、3万円の損失が出ている場合の有効証拠金は7万円になります。
FX取引所によっては「実質証拠金」や「純資産」と表示されていることもありますが、全て同じ意味です。有効証拠金は、ポジションを保有している間、常に増減します。そのため、証拠金維持率のみならず、有効証拠金も定期的にチェックしましょう。
有効証拠金の計算式①通貨を保有していない場合
通貨を保有していない場合の有効証拠金に関しては、以下の計算式で求めることができます。
証拠金 + 損益額 = 有効証拠金
例えば、10万円の証拠金があったとします。通貨は購入していないため、利益も損失も出ていません。そのため、損益額は0円です。その場合、以下の計算式が成り立ちます。
10万円 + 0円 = 10万円
上記の条件だと、有効証拠金は10万円ということが分かります。
有効証拠金の計算式②含み益が出ている場合
含み益が出ている場合の有効証拠金に関しては、以下の計算式で求めることができます。
証拠金 + 含み益の金額 = 有効証拠金
例えば、10万円の証拠金があり、7万円の利益が出ていたとします。その場合、以下の計算式が成り立ちます。
10万円 + 7万円 = 17万円
上記の条件だと、有効証拠金は17万円ということが分かります。
有効証拠金の計算式③含み損が出ている場合
含み損が出ている場合の有効証拠金に関しては、以下の計算式で求めることができます。
証拠金 - 含み損の金額 = 有効証拠金
例えば、10万円の証拠金があり、2万円の損失が出ているとします。その場合、以下の計算式が成り立ちます。
10万円 - 2万円 = 8万円
上記の条件だと、有効証拠金は8万円ということが分かります。
有効証拠金と証拠金維持率の関係性
証拠金維持率は、証拠金をどのくらいの割合で維持しているのか数値化したものでした。そのため、有効証拠金が分かると、証拠金維持率を求めることができます。有効証拠金が少なくなると、証拠金維持率も低くなり、強制ロスカット(購入している通貨を強制的に決済する機能)が執行されるので注意しましょう。証拠金維持率に関しては、以下の式で求めることができます。
有効証拠金 ÷ 必要証拠金 = 証拠金維持率
余剰証拠金とは
余剰証拠金とは、有効証拠金から必要証拠金を引いた金額のことです。余剰証拠金は、現在のFX口座の余力度を数値化したものであり、余剰証拠金内であれば通貨を追加注文することができます。基本的に余剰証拠金に余裕がある場合は、比較的安全な取引をしているという証明になり、余剰証拠金に余裕がない場合は、リスクが高い取引をしているという証明になります。
余剰証拠金の計算式
余剰証拠金に関しては、以下の計算式で求めることができます。
口座残高 + ボーナス・キャンペーン額 + 含み損・含み益 = 余剰証拠金
例えば、FX口座に20万円あり、ボーナスやキャンペーンで5万円の資金を受け取ったとします。そして、現在は15万円の含み益があるとします。その場合、以下の式が成り立ちます。
20万円 + 5万円 + 15万円 = 40万円
つまり、余剰証拠金は40万円ということが分かります。
余剰証拠金とゼロカットシステム
FX会社によっては、口座残高がマイナスになった場合、そのマイナスをペナルティなしで帳消しにしてくれる「ゼロカット」というシステムを導入しています。
基本的には口座残高がマイナスになるとゼロカットが執行されますが、ボーナスや評価損益などで余剰預金がプラスである場合、ゼロカットは執行されません。「口座残高がマイナスになってもゼロカットが執行されない」と悩んでいる場合は、一度余剰預金がプラスではないか確認してみましょう。
ゼロカットシステムについて詳しくはこちらをご参考ください。
>海外FXのゼロカットシステムとは?導入理由やロスカットとの違いについて
余剰証拠金がマイナスになった場合①通貨を購入することができなくなる
余剰証拠金がマイナスになると、通貨を購入することができません。例えば、手元に9,000円しかない状態で1万円分の通貨を購入することはできません。対処方法として、最も簡単な方法は「口座残高に資金を入金する」ことです。口座残高に資金を入金し、手元の資金が1万円になれば、1万円分の通貨を購入することができます。
余剰証拠金がマイナスになった場合②ロスカットの可能性が高まる
余剰証拠金がマイナスになると、ロスカットが行われる可能性が高くなります。厳密には証拠金維持率が一定割合以下になるとロスカットされるのですが、余剰証拠金と証拠金維持率は密接な関係にあります。
余剰証拠金が減ると、証拠金維持率も低くなります。そのため、ロスカットを防ぐために、余剰証拠金は多くしておくことをおすすめします。
海外FXで強制ロスカットを防ぐ方法
強制ロスカットが発動すると、口座残高が大きく減ります。こうなると、ここから巻き返していくのは難しいでしょう。そのため、FXで勝っていくためには、強制ロスカットを防いで取引していく必要があります。しかし、防ぎ方が分からない人もいるでしょう。ここでは、そのような人に向けて強制ロスカットを防ぐ方法を紹介します。
証拠金維持率とレバレッジを見直す
レバレッジは、投資残高のみならず、含み益や含み損にもかかります。レバレッジを高くするほど、証拠金維持率の変動も大きくなるので注意しましょう。たった数分で100%近く変動することも珍しくありません。そのため、必要以上に高いレバレッジはかけないようにしましょう。
FX初心者であれば、2〜3倍のレバレッジから始めることをおすすめします。同時に、証拠金維持率の見直しにも力を入れてください。証拠金維持率が大きく下がってきた場合は、追加入金をしたりポジションを手放したりして対処しましょう。
損切りを徹底する
損切りとは、含み損が出ている状態でポジションを決済することです。一見、無駄な行為のように見えますが、これはFXで勝っていくために欠かせない行為です。なぜなら、損切りは「今以上に大きな損失を負わないために行う行為」だからです。
成長が見込めないポジションを早い段階で手放すことで、最小限の損失に抑えられ、大切な資金を守ることができます。同時に、小さな損失であれば、今後の取引で巻き返せるチャンスがあります。以上の理由から、損切りはデメリットよりもメリットの方が大きい戦略です。躊躇せず、積極的に活用していきましょう。
マージンコールは必ず確認する
マージンコールとは、証拠金維持率が一定の水準を下回ると鳴る通知のことです。どこまで低下するとマージンコールが鳴るのかは、利用するFX取引所によって異なります。気になる人は、利用するFX取引所の公式サイトを確認しましょう。
マージンコールが鳴るような取引は、少しリスクが高いと推測されます。もしくは、相場が急激に変動しているのかもしれません。いずれにせよ、危険度の高い状態であるため、急ぎで資金状況や戦略を見直しましょう。ポジションの整理やレバレッジの見直しなども行うことをおすすめします。
マージンコールについて詳しくはこちらをご参考ください。
>FXのマージンコールとは?証拠金維持率や対策・対処方法について解説
不要なポジションを持たない
基本的に、ポジションを持つほど証拠金維持率は低下していきます。そのため、エントリーは勝率の高いポイントのみに絞り、保有するポジションの数を限定しましょう。FX初心者は最大3つまでに抑えることをおすすめします。
3つ以上ポジションを持ちたい場合は、必ず、含み益が出ている状態で行ってください。含み益が出ていれば、証拠金維持率が高くなるので、通常時よりはリスクが低くなるからです。しかし、調子のよい相場が永遠に続くことはありません。そのため、あまり欲張らず、タイミングを見てポジションの整理もしていきましょう。
両建てをする
両建てとは、「同じ通貨ペアの買いポジションと売りポジションを同時に保有する戦略」のことです。例えば、ドル円の買いポジションと売りポジションをそれぞれ1Lot保有するとしましょう。この場合、「1Lot−1Lot=0Lot」とみなされ、ドル円のポジションは保有していないという扱いになります。
証拠金維持率はドル円のポジションを持つ前の数値に戻ります。含み損が出ている場合は、その含み損分しか引かれません。両建ては、追加でポジションを保有する余力はないが、他の通貨ペアのチャンスを掴みたい場合に活用しましょう。
両建てについて詳しくはこちらをご参考ください。
>海外FXの両建てとは?やり方や初心者におすすめしない理由も解説!
追加入金を検討する
追加入金とは、その名の通り、FXの口座に追加の投資資金を入金することです。どれほど回復するのか、実際にシミュレーションしてみましょう。まずは、投資資金が5万円で、1万円の含み損が出ているとします。この場合の証拠金維持率は、80%です。ここに、20万円のお金を追加入金するとします。この場合、証拠金維持率は96%まで上昇します。
追加入金は、簡単に証拠金維持率を高められる方法ですが、入金したお金が反映されるまで数日のラグが発生します。そのため、余裕を持って入金するようにしましょう。
逆指値を設定する
先ほど、「強制ロスカットを防ぐためには損切りが大切」と説明しました。しかし、損切りが苦手な人もいるでしょう。実際、多くのFX初心者は損切りが上手くできず、FXの世界から退場していきます。これを解決するのが「逆指値」です。逆指値とは、注文した価格よりも不利な値段で決済を行う注文方法です。
例えば、通貨を100円で購入した場合、99.999円以下で決済が実行されるのが逆指値です。予約注文なので、設定さえしておけば、後は自動で決済してくれます。急激な為替変動を防げるのも、逆指値ならではのメリットです。
まとめ
今回は、FXの取引に必要なさまざまな「証拠金」について説明しました。多くの内容を盛り込んだため、ここで一度おさらいしましょう。
・証拠金:FXを行う際に必要な資金担保のこと
・必要証拠金:ポジションを購入するために必要な資金のこと
・有効証拠金:FX取引をする際に使える証拠金の総額のこと
・余剰証拠金:有効証拠金から必要証拠金を引いた金額のこと
・証拠金維持率:現在の口座残高にどれほどの余裕があるのかを示した指標のこと
どれも、FX取引をする上で欠かせない証拠金です。少しずつでよいので、それぞれの意味を覚えていきましょう。