FXには、数々のテクニカル指標があります。テクニカル指標とは、相場の値動きや特徴を分析できる優れものです。プロトレーダーは、必ず使っていると言っても過言ではありません。実は、ボリンジャーバンドもテクニカル指標の一種です。勝率アップが期待できるので、トレーダーはぜひ使ってみてください。しかし、使い方がよく分からないという人もいるでしょう。
今回は、「FXで使うボリンジャーバンド」について説明します。FX初心者に向けて、ボリンジャーバンドの見方や活用方法などもまとめました。
ボリンジャーバンドとは
ボリンジャーバンドとは、米国の投資家ジョン・ボリンジャー氏が開発したテクニカル指標です。価格変動率(ボラティリティ)を示す標準偏差が利用されています。ボリンジャーバンドを使うと、相場の方向性はもちろん、値動きの予想もできます。非常に優れたテクニカル指標なので、多くのプロトレーダーが活用しています。
ボリンジャーバンドを構成する7つの線
ボリンジャーバンドは、以下7つの線で構成されています。
・+1σ
・+2σ
・+3σ
・指数平滑移動平均線
・-1σ
・-2σ
・-3σ
標準偏差とは
標準偏差とは、一定期間の価格を平均値と比較した場合、その価格はどのくらいバラついているかを示した数値です。標準偏差の数値は、価格のバラつきがあるほど高くなります。つまり、「標準偏差の数値が高い=ボラティリティが高くなる」と判断することができます。標準偏差は以下のような見方もできます。
・±1σ = 68.26%
・±2σ = 95.44%
・±3σ = 99.74%
上記は、価格が標準偏差のバンド内に収まる確率です。ほとんどの価格が±3σ内に収まるとされているので、取引戦略を立てる際はこの域を飛び越さないようにしましょう。
ボリンジャーバンドの計算式
FXで活用するボリンジャーバンドを作るためには、まず一定期間の価格の「標準偏差」を求めなければいけません。標準偏差は、以下の計算式で求められます。(一定期間はn日間とし、価格は通常の終値を活用する)
標準偏差 = √(n × 期間中の価格を2乗した際の合計 − 期間中の価格を2乗)÷(n ×(n−1))
上記の計算式で出た標準偏差を使うと、各バンドの数値が求められます。
・±1σ = n日間の単純移動平均 ± 標準偏差
・±2σ = n日間の単純移動平均 ± 標準偏差 × 2
・±3σ = n日間の単純移動平均 ± 標準偏差 × 3
エンベロープとの違い
エンベローブとは、移動平均線を一定の距離に置いて上下移動させたものです。ボリンジャーバンドとエンベローブの違いは、「バンドが伸縮するかどうか」です。ボリンジャーバンドは、チャートの変動に合わせて伸縮しますが、エンベローブは伸縮しません。
チャートの変動を把握したい場合はボリンジャーバンドを使い、具体的なエントリーポイントを探りたい場合はエンベロープを使いましょう。
ボリンジャーバンドのおすすめ設定値
ボリンジャーバンドを形成しているのは、「価格」と「期間」です。価格はチャート上のものを使うのでとくに設定の必要はありませんが、期間はトレーダー自身が決める必要があります。候補の期間はたくさんあるので、FX初心者は迷うでしょう。この段落では、FX初心者でも使いやすい「ボリンジャーバンドのおすすめ設定値」を紹介します。
ボリンジャーバンドのおすすめ設定値は「20日」
ボリンジャーバンドのおすすめ設定値は「20日」です。20日という期間は、相場の1ヶ月間の営業日でキリがよいからです。実際、多くのトレーダーが20日という期間を使って戦略を立てています。比較的機能しやすいという面からも、期間は「20日」をおすすめします。
移動平均線のおすすめ設定値は時間足で異なる
移動平均線のおすすめ設定値は時間足で異なります。具体的には以下の通りです。
・短期足(1~30分足)の場合:5~20日
・長期足(1時間足以上)の場合:200日
ボリンジャーバンドの見方
これまでは、ボリンジャーバンドの概要や設定値などについて説明しました。基礎知識がついたら、次は実践で使えるように「見方」を覚えていきましょう。ボリンジャーバンドの見方を覚えると、相場の異常にいち早く気づけたりトレンドの傾向をしっかり把握できたりします。それでは、ボリンジャーバンドの見方について説明します。
相場の異常性
ボリンジャーバンドを確認すれば、その通貨ペアは現在買われ過ぎているのか、売られ過ぎているのかが一目で分かります。FX初心者は、±2σに注目しましょう。一般的にチャートは、95.44%の確率で±2σの間に収まると言われています。そのため、チャートが±2σを超えた場合、その通貨ペアは「買われ過ぎている」「売られ過ぎている」と判断することができます。
95.44%の確率を突破してきているので、この相場は普通ではありません。相場を荒らす重要な情報が出ている場合があるので、ニュースや経済指標などをすぐに確認しましょう。
傾きからトレンド傾向を見る
ボリンジャーバンドは、上下に動きます。この動きを見ることで、トレンドの方向と強さが分かります。例えば、ボリンジャーバンドが右肩上がりに急上昇しているとしましょう。この場合、「強い上昇トレンドが形成されている」と判断することができます。反対に、ボリンジャーバンドがやや右肩下がりに下落している場合は、「力は弱いが下落トレンドが形成されている」と判断することができます。
視覚的にトレンドの方向・強さを把握できるのは、ボリンジャーバンドの強みです。一目で把握できるほどシンプルなので、FX初心者でも使いやすいでしょう。
バンドの幅でボラティリティを見る
ボラティリティとは、値動きの激しさのことです。ボリンジャーバンドを使えば、ボラティリティも分かります。判断基準は、以下の通りです。
・バンドの幅が広い:値動きが激しい(ボラティリティが高い)
・バンドの幅が狭い:値動きが緩やか(ボラティリティが低い)
取引で狙える最大利益は、ボラティリティに左右されます。短期間で大きな利益を狙いたい人はボラティリティが高い相場を選びましょう。しかし、リスクとリターンは表裏一体です。ボラティリティが高い相場は、短期間で大きな損失を負う可能性もあるので、注意しましょう。
ボリンジャーバンドの動き方
相場の状況に応じて、ボリンジャーバンドはさまざまな動き方をします。すべての動き方を覚えた方が取引は有利になりやすいですが、いきなりすべて覚えるのは難しいでしょう。そこで、この段落では「初めに覚えておきたいボリンジャーバンドの動き方」を4つ紹介します。どれも出現回数が多いので、早ければ今日見ることができるでしょう。
スクイーズ
スクイーズとは、ボリンジャーバンドの幅が狭くなってきている状態のことです。売買比率がほぼ同じでチャートの方向性が定まらない「レンジ相場」でよく現れます。ボラティリティが低いため大きな利益は狙えないものの、低リスクで取引できるのがスクイーズの特徴です。
しかし、スクイーズが形成された後は、大きなトレンドが発生する可能性があります。油断していると大きな損失を負う恐れがあるので、十分注意しましょう。
エクスパンション
エクスパンションとは、ボリンジャーバンドの幅が広くなってきている状態のことです。主に、チャートが特定の方向に進むトレンド相場で現れます。ボラティリティが高いため大きな利益を狙えるタイミングではありますが、その分、損失リスクも高くなっています。
油断すると大きな損失を負う可能性があるので、リスク管理は徹底しましょう。ポジションを複数持つ場合は、こまめな資金管理も欠かさずに行ってください。
バンドウォークとバンドの反転
バンドウォークとは、トレンド側の±2σに沿って押し目を形成せずに伸びていくチャートのことです。強いトレンドが発生している場合に現れます。バンドウォークが発生している場合は、利益を伸ばしていくのがセオリーです。焦って利益確定しないようにしましょう。
利益確定は、バンドの反転が起こったタイミングで行います。バンドの反転は、トレンドの力が弱まった一つのサインだからです。さらにトレンドが続いていくこともありますが、ここで利益確定をしても問題はありません。
平行移動
平行移動とは、その名の通り、チャートがほぼ真横に動いている状態のことです。スクイーズよりも値幅が広いという特徴があり、レンジ相場で現れます。平行移動している間は、同じ価格帯で何度も反発する傾向があります。その特性を利用して、複数回反発している価格帯で逆張りを仕掛けていくのもよいでしょう。
FXでは、レンジ相場が7割と言われているため、平行移動時の取引を極めることができれば、相場の7割を攻略していることになります。
ボリンジャーバンドの活用方法
今回説明したボリンジャーバンドの見方・動き方を理解すれば、現在はどのような相場なのか判断できるようになっているでしょう。次に覚えたいのが、「ボリンジャーバンドの活用方法」です。具体的なエントリータイミングを覚えれば、利益を得られる可能性があるからです。それでは、活用方法の詳細を説明します。
バンドウォークを狙った順張り
バンドウォークを狙った順張りは、以下の手順で行います。
1.スクイーズしているポイントを見つける
2.スクイーズからエクスパンションに変わったことを確認する
3.トレンド側の±2σにチャートが達したタイミングでエントリーする
4.トレンドの反対側にある±2σが反転したタイミングでポジションの半分を決済
5.トレンド側の±2σが反転したタイミングで残りのポジションを決済
これは、「トレンドの初期段階」を狙う取引手法です。基本的にエントリーのタイミングが遅れるほど、想定している最大利益は少なくなります。取引の条件が満たされていると判断したら、なるべく早くエントリーしましょう。
±1σを使った順張り
±1σを使った順張りは、以下の手順で行います。
1.チャートが±1σを超えたタイミングで、トレンド側にエントリーする
2.チャートが±2σに達したタイミングで利益確定をする
この取引手法は、非常にシンプルなので、トレンド相場でもレンジ相場でも使うことができます。しかし、大きなトレンド相場よりもレンジ相場で力を発揮する傾向があります。FX初心者は、まずレンジ相場で使ってみましょう。
また、±1σを使った順張りは、低リスクで取引できます。大きな損失を負う可能性が低いので、少額でFXにチャレンジしている人にもおすすめできます。
バンドを抵抗として逆張り
概要の段落でも説明しましたが、チャートは±2σの範囲内に95.44%の確率で収まります。この特性を利用して編み出されたのが、「バンドを抵抗としての逆張り手法」です。具体的な取引手順は以下にまとめました。
1.チャートが+2σに達したタイミングで売りエントリー(今回は、売り目線で取引をすると仮定)
2.チャートが−2σに達したタイミングで利益確定
資金効率を上げたい人は、チャートが±2σまで達するのを待たず、±1σに達したタイミングで利益確定をしてください。損切りは、エントリーをしてからチャートが中々反転しない場合、または±3σまで達したタイミングで行いましょう。
ボリンジャーバンドを使った手法で失敗する基準とは
ボリンジャーバンドは、昔から使われている有名なテクニカル指標です。信頼できるとして、多くの手法に使われています。しかし、ボリンジャーバンドも完璧なテクニカル指標ではありません。正しい方法で使っても上手く機能しない場合があります。そこで、この段落では「ボリンジャーバンドの失敗基準」について説明します。
順張りの失敗基準
順張りの失敗基準は、バンドウォークせずにチャートがミドルラインまで戻ってきてしまった場合です。ボリンジャーバンドがセオリー通りに機能すれば、チャートがミドルラインまで戻ってくることはありません。今後の戦略・考えがとくにない場合は、なるべく早く損切りしましょう。
逆張りの失敗基準
逆張りの失敗基準は、バンドウォークが発生した場合です。逆張りでの取引は、基本的にスクイーズ内の値幅で行います。しかし、スクイーズはいずれエクスパンションに変わります。エクスパンションしているのにも関わらず、粘っていると大きな損失を負ってしまうので、エクスパンションに変わったと判断した時点で素早く損切りしましょう。
ボリンジャーバンドをさらに使いこなすコツ
ボリンジャーバンドの見方や動き方のみならず、活用方法や失敗基準なども理解して取引に臨めば、ある程度、様になった取引ができるでしょう。しかし、さらに使いこなしたいと向上心がある人もいると思います。そのような人に向けて、この段落では、「ボリンジャーバンドをさらに使いこなすコツ」を2つ紹介します。
長い時間軸と組み合わせて使う
基本的に長い時間軸のチャートは、ダマシやノイズが少ないので素直に動きます。反対に、短い時間軸はダマシやノイズが多いので、注意してチャートを見続ける必要があります。ボリンジャーバンドに慣れるためにも、まずは長い時間軸で取引してみましょう。
ボリンジャーバンド+αで相場を読む
もちろん、ボリンジャーバンド単体でも取引していくことはできます。しかし、それだとどうしても根拠が弱くなります。弱い根拠で取引を行うと失敗する可能性が高まるので、FX初心者にはおすすめできません。FX初心者は、他のインジケーターも使って取引していきましょう。おすすめのインジケーターは、RSIやストキャスティクスなどです。
ボリンジャーバンドと相性のよいインジケーター
先ほど、「ボリンジャーバンド+αで相場を読もう」と説明しました。しかし、どのインジケーターと組み合わせればよいのか分からない人もいるでしょう。相性の悪い組み合わせになってしまうと、反対に負ける確率が高まるので注意しなければいけません。そこで、この段落では、「ボリンジャーバンドと相性のよいインジケーター」を紹介します。
RSI
RSI(アールエスアイ)とは、通貨ペアの売買比率を把握したい場合に役立つインジケーターです。売買比率は、0〜100%の範囲で示されています。具体的な判断方法は、以下にまとめました。
・通貨の買われ過ぎを判断する基準:RSIの数値が70%以上
・通貨の売られすぎを判断する基準:RSIの数値が30%以上
RSIは、一本の線が表示されるだけなので、非常にシンプルです。取引画面が見にくくならないので、FX初心者でも使いやすいでしょう。しかし、精度はあまり高くありません。リスク管理は怠らないようにしましょう。
RSIについて詳しくはこちらをご参考ください。
>海外FXのRSIとは?使い方や見方などを徹底解説!
MACD
MACD(マックディー)とは、移動平均線というインジケーターを発展させたものです。売買シグナルの精度がより高くなっているので、プロのトレーダーからも人気があります。MACDは、レンジ相場よりもトレンド相場で力を発揮します。ボリンジャーバンドを使って順張りをする場合は、積極的にMACDも活用しましょう。MACDのエントリーサインは、以下の通りです。
・買いサイン(ゴールデンクロス):MACDラインがシグナル線を下から上に抜けたタイミング
・売りサイン(デッドクロス):MACDラインがシグナル線を上から下に抜けたタイミング
MACDについて詳しくはこちらをご参考ください。
>MACDの使い方!相性が良いテクニカル指標を海外FX初心者向けに紹介
ストキャスティクス
ストキャスティクスとは、Slow%Dというラインを使って通貨ペアの売買比率を判断するインジケーターです。具体的な判断方法は、以下の通りです。
・通貨の買われ過ぎを判断する基準:Slow%Dが80%以上の領域を推移している
・通貨の売られすぎを判断する基準:Slow%Dが20%以下の領域を推移している
Slow%Kというラインを使えば、売買サインも得ることができます。
・買いサイン:Slow%KがSlow%Dを下から上に抜けたタイミング
・売りサイン:Slow%KがSlow%Dを上から下に抜けたタイミング
ストキャスティクスについて詳しくはこちらをご参考ください。
>海外FXのストキャスティクスとは?逆張りを仕掛けたいトレーダー必見!
ボリンジャーバンドの注意点
FXの世界で長く取引していくためのコツは、「リスクを減らす」ことです。リスクを減らす方法は多岐に渡りますが、「注意点を理解する」のも一つの方法です。そこで、この段落では、「ボリンジャーバンドの注意点」を3つ紹介します。注意点を理解して取引を行えば、大切な投資資金を守ることができるので、ぜひ参考にしてください。
逆張りは中級者向け
ボリンジャーバンドは、順張りでも逆張りでも使える万能なテクニカル指標です。しかし、ボリンジャーバンドを使った逆張りは中級者向けなので注意しましょう。シンプルな取引手法ではありますが、一歩間違えると大きな損失に繋がる場合があるからです。
FX初心者がFXを辞めてしまう大きな原因は、資金を大きく減らしてしまうことです。FX初心者は、比較的リスクが低い「順張り」から使ってみましょう。取引に慣れてきて、逆張りを試してみたい場合は、小さいロットで挑戦してみることをおすすめします。
バンドに収まる確率=取引の勝率ではない
チャートは、99.74%の確率で±3σ内に収まるとされています。これを勘違いして、「±3σを使えば99.74%の確率で勝てる」と考える人もいるでしょう。しかし、チャートが特定の範囲内に収まる確率と勝率は比例しません。
FXの勝率を上げるためには相場分析はもちろん、資金管理や情勢把握などが必要です。バンドに収まる確率と取引の勝率は全くの別物なので、勘違いしないように注意しましょう。
相場が急変した場合は役に立たない
相場が急激に動くと、チャートはボリンジャーバンドの±3σを突き抜けていく場合があります。長期的に見れば±3σ内に収まることが多いのですが、賭け方を間違えると相場が落ち着くまでに大きな損失を負う場合があります。
相場の急激な変動には、どのテクニカル指標を使っても対応できません。予想外のことが起こっても耐えられるように資金管理・リスク管理は怠らないようにしましょう。
まとめ
今回は、FXのボリンジャーバンドについて説明しました。ボリンジャーバンドとは、相場の方向性分析・値動きの予想ができるテクニカル指標です。万能型のテクニカル指標なので、今もなお使われ続けています。FX初心者は、期間を20日に設定し、バンドウォークを狙った順張りから使ってみてください。
比較的機能しやすい取引手法なので、タイミングを間違えなければ高い確率で利益を得ることができるでしょう。しかし、ボリンジャーバンドが機能しない場合もあります。リスク管理・資金管理は怠らないようにしながら、慎重に取引することを心がけてください。