FXの取引手法を分類すると、「順張り」と「逆張り」の2種類に分けられます。このうち、逆張りはトレンドの転換を見極める必要があります。トレンドの転換を見極めるのは少々難易度が高く、上手く逆張りが使えなくてつまずいている人もいるでしょう。
そのような人におすすめなのが、「ストキャスティクス」です。逆張りに強いインジケーターなので、ストキャスティクスを覚えれば難なく逆張りができるようになるでしょう。そこで今回は、ストキャスティクスの概要や弱点・相性のよいインジケーターなどについて説明します。
ストキャスティクスとは
ストキャスティクスとは、通貨の売買比率を把握したい場合に役立つオシレーター系テクニカル指標です。現在、その通貨ペアは買い勢力の方が強いのか、売り勢力の方が強いのかが一目で分かります。ストキャスティクスは、主に「逆張り」をする際に使います。
ストキャスティクスを構成する3つの線
ストキャスティクスは、以下3つの線で構成されています。
・%K
・%D
・Slow%D
ストキャスティクスは、一定期間の価格を100とみなした場合に、現在の価格はどのあたりに値するのかを示すテクニカル指標です。その値は、割合で示されるので、3つの線には「%」がついています。
線の意味もありますが、FXで取引をするだけであれば、意味を具体的に覚える必要はありません。「%K」 「%D」 「Slow%D」という3つの線があるということだけ覚えておきましょう。インジケーターの開発や相場の研究なども行いたい人は、意味まで覚えておくことをおすすめします。
ストキャスティクスは2種類ある
ストキャスティクスを細かく分類すると、「ファーストストキャスティクス」と「スローストキャスティクス」の2種類に分けられます。両方のテクニカル指標を使って取引をしていくのですが、現在はスローストキャスティクスの方が主流です。
ファーストストキャスティクスとは
ファーストストキャスティクスとは、%Kと%Dを使って相場を分析するテクニカル指標です。一定期間の変動幅において、%Kは直近の価格のどの辺りに位置するのかが分かります。例えば、一定期間を9日に設定するとしましょう。直近の価格が9日間で最も高い場合は%Kが100%、最も低い場合は0%と示されます。
ファーストストキャスティクスは価格に対して素早く反応しますが、ダマシに遭遇しやすいという特徴があります。
スローストキャスティクスとは
スローストキャスティクスとは、%DとSlow%Dを使って相場を分析するテクニカル指標です。%Dは、ファーストストキャスティクスと同じラインを使います。%DをSlow%Kと呼ぶトレーダーもいますが、呼び方が異なるだけで意味は同じです。
Slow%Dとは、%Dを移動平均化させたラインです。そのため、スローストキャスティクスは、価格への反応が遅いという特徴があります。しかし、ダマシに遭遇しにくいので安定した取引が望めます。
ストキャスティクスの計算式
ストキャスティクスは、3つのラインがあり、それぞれに計算式があります。
・%K:( n日間の最高値 − n日間の最安値 )÷( 終値 − n日間の最安値 )×100
・%D:n日間の%Kの合計値 ÷ n
・Slow%D:n日間の%Dの合計値 ÷ n
%Dは、%Kの移動平均線です。そのため、%Dは%Kを追いかけるように動きます。
おすすめの設定期間
ストキャスティクスを使うためには、期間を設定しなければいけません。基本的に決まりはないので、自分が使いやすいように設定してください。しかし、自分に合っている設定値がまだ分からない人もいるでしょう。そのような人は、まずストキャスティクスの基本と言われている以下の数値を設定することをおすすめします。
・%K:14日間
・%DとSlow%D:3日間
使っている人が多い設定値なので、教科書通りにチャートが動きやすいといったメリットがあります。
ストキャスティクスの使い方
ストキャスティクスは、さまざまな相場で使えます。しかし、いきなり難易度が高いことを実践しても使いこなすのは難しいでしょう。大きな損失を負う恐れもあり、危険です。それを防ぐために、まずはストキャスティクスの基礎的な使い方を紹介します。4つ紹介するので、使いやすいと感じたものから使ってみてください。
売買比率を参考にした手法
ストキャスティクスでは、数値が20%を下回ったら「売られ過ぎ」、80%を上回ったら「買われ過ぎ」と判断していきます。チャートは、売られ過ぎのラインに突入すると上昇する傾向があり、買われ過ぎのラインに突入すると下落する傾向があります。この特性を利用して、逆張りしていきましょう。
具体的には、数値が80%を超えたタイミングで「売りエントリー」、数値が20%を下回ったタイミングで「買いエントリー」します。決済のタイミングは、買いでエントリーしたなら80%付近、売りでエントリーしたなら20%付近で行います。しかし、予想したほどチャートが動かない場合もあるので、勝率を高めたい場合は50%付近で決済しましょう。
ゴールデンクロス
ゴールデンクロスとは、短期移動平均線が長期移動平均線を下から上に突き抜ける現象のことです。ストキャスティクスの場合は、短期移動平均線が%K、長期移動平均線が%Dにあたります。%Kが%Dを下から上に突き抜けたらゴールデンクロスが発生したと判断しましょう。
ゴールデンクロスが発生した場合は、「買い」でエントリーしてみてください。決済は、次の段落で説明するデッドクロスが発生したタイミングで行います。
デッドクロス
デッドクロスとは、短期移動平均線が長期移動平均線を上から下に突き抜ける現象のことです。ストキャスティクスの場合は、%Kが%Dを上から下に突き抜けたらデッドクロスが発生したと判断します。
デッドクロスが発生した場合は、「売り」でエントリーしてみましょう。勝率を高めたい人はストキャスティクスの数値が80%以上でデッドクロスが発生するのを待ってください。決済は、ゴールデンクロスが発生したタイミングで行います。
ダイバージェンス
ダイバージェンスとは、チャートとストキャスティクスの動きが合わない現象のことです。例えば、チャートは上昇しているのにストキャスティクスのラインは下落している場合にダイバージェンスが発生したと判断します。
ダイバージェンスは、トレンドの切り替わりを示唆するサインです。タイミングを見極めて現在のトレンドとは反対方向にエントリーしてみましょう。決済は、ゴールデンクロス・デッドクロスが発生したタイミングで行います。
ストキャスティクスの弱点
ストキャスティクスの弱点は、「大きなトレンドでは機能しづらい」ことです。取引手法を確認すると分かりますが、ストキャスティクスの取引手法は全て「逆張り」です。つまり、トレンドの転換を見極めてエントリーしていくことになります。しかし、大きなトレンドはトレンド転換の予兆を見せても、何事もなかったかのようにトレンドが継続していく場合があります。
大きなトレンドで、トレンドの転換を見極めるのはほぼ不可能です。ストキャスティクスは、トレンド終了のタイミングが分かりやすい「弱いトレンド」または「レンジ相場」で使うようにしましょう。
FXでストキャスティクスを活かしていく方法
ストキャスティクスは、移動平均線やRSI(アールエスアイ)などのような比較的知名度のあるインジケーターと比べると少し癖があります。癖を考慮して使っていく必要があるので、独学で覚えるのはほぼ不可能と言ってもよいでしょう。そのため、この段落でストキャスティクスの活かし方について覚えることをおすすめします。
勢いがある通貨ペアで使う
扱う通貨ペアによっては、レンジ相場になるとチャートがほぼ動かなくなります。そのような通貨ペアでは、ストキャスティクスのチャートもほぼ動きません。勢いが弱い通貨ペアでストキャスティクスを使うと、そもそもエントリータイミングが来ない場合があります。
仮に来たとしても信ぴょう性が薄い売買シグナルの可能性があります。ある程度勢いがないと、ストキャスティクスが機能しないので、なるべくドル円やユーロドルなどの取引している人口が多い通貨ペアでストキャスティクスを使うようにしましょう。
相場が綺麗に形成されている通貨ペアで使う
相場が綺麗に形成されている通貨ペアは、ノイズやダマシが少ない傾向にあります。そのような通貨ペアでストキャスティクスを使えば、取引で失敗する確率は低くなるでしょう。
FX初心者は、相場の綺麗さをトレンドラインで判断してみることをおすすめします。高値、または安値同士を1本の線で結び、その線からチャートがあまりはみ出ていなければ、「相場は綺麗に形成されている」と判断しましょう。
ストキャスティクスと相性のよいインジケーター
ストキャスティクスは、単体で取引することができます。しかし、単体での取引はエントリー・決済根拠が弱まるため、おすすめしません。なるべく、他のインジケーターと組み合わせて使うことをおすすめします。MACD(マックディー)やボリンジャーバンドなど、ここではストキャスティクスと相性のよいインジケーターを4つ紹介します。
MACD
MACD(マックディー)とは、移動平均線を発展させたインジケーターです。MACDとMACD線を使って、売買のタイミングを探ることができます。ストキャスティクスにMACDを組み合わせる場合は、以下の手順で取引してみましょう。
1.ストキャスティクスで、デッドクロスが発生していることを確認する
2.MACDでもデッドクロスが発生していることを確認する
3.両方のデッドクロスが重なったタイミングで、売りエントリーをする
4.どちらかのインジケーターで、ゴールデンクロスが発生したタイミングで決済をする
MACDについて詳しくはこちらをご参考ください。
>MACDの使い方!相性が良いテクニカル指標を海外FX初心者向けに紹介
ボリンジャーバンド
ボリンジャーバンドとは、標準偏差と移動平均線で構成されているインジケーターです。±1σのバンド内には約68.3%、±2σのバンド内には約95.4%の確率でチャートが収まるとされています。この特性とストキャスティクスの売買サインを組み合わせて、以下の手順で取引をしてみましょう。
1.ボリンジャーバンドの−2σをチャートが下抜けしたことを確認する
2.ストキャスティクスで、ゴールデンクロスが発生したことを確認する
3.買いでエントリーをする
4.ストキャスティクスでデッドクロスが発生したタイミングで決済をする
ボリンジャーバンドについて詳しくはこちらをご参考ください。
>海外FXのボリンジャーバンドとは?おすすめ分析手法や設定値などについて解説します
RSI
RSI(アールエスアイ)とは、通貨の売買比率を把握したい場合に役立つインジケーターです。RSIの数値が30%以下で「通貨は売られすぎている」、70%以上で「通貨は買われすぎている」と判断します。ストキャスティクスと組み合わせる場合は、以下の手順で取引をしてみましょう。
1.RSIが30%以下を推移していることを確認する
2.ストキャスティクスで、ゴールデンクロスが発生していることを確認する
3.両方の条件が満たされているタイミングで、買いエントリーをする
4.ストキャスティクスでデッドクロスが発生したタイミングで決済をする
RSIについて詳しくはこちらをご参考ください。
>海外FXのRSIとは?使い方や見方などを徹底解説!
移動平均線
移動平均線とは、一定期間の価格の平均値を折れ線グラフにしたインジケーターです。トレンドの向きを把握したい場合に役立ちます。ストキャスティクスと組み合わせる場合は、以下の手順で取引をしてみましょう。
1.長期移動平均線が上向きから下向きに変わろうとしていることを確認する
2.ストキャスティクスで、デッドクロスが発生していることを確認する
3.両方の条件が満たされている状態で、売りエントリーをする
4.長期移動平均線が上向きに変わったタイミング、またはストキャスティクスでゴールデンクロスが発生したタイミングで決済をする
移動平均線について詳しくはこちらをご参考ください。
>移動平均線とは?見方や手法を海外FX初心者向けに解説
FXでストキャスティクスを使う場合の注意点
ストキャスティクスを使えば、取引の勢力図や売買タイミングなどが分かるようになります。上手く使えば勝率アップが期待できるでしょう。しかし、ストキャスティクスが機能しない相場や情報を信用した弊害なども存在します。大きな失敗を防ぐために、ここではストキャスティクスを使う場合の注意点を3つ紹介します。
チャートが乱高下しているときは使わない
経済指標が発表されるときや要人が発言するときなどは、どの通貨ペアもチャートが乱高下します。このときは、さまざまな考えを持ったトレーダーが集結し、通貨の売買が活発になるのでチャートの動きが非常に読みづらくなります。ストキャスティクスは、チャートの乱高下が収まったら使うようにしましょう。
ストキャスティクスを信じ込みすぎない
チャートは、ストキャスティクスに連動して動くわけではありません。ストキャスティクスの情報とは反対にチャートが動くこともあります。ストキャスティクスの情報を「信じて」取引するのではなく、「参考」にして取引をするようにしましょう。
自己ルールを決めないでストキャスティクスを使わない
一つ前の段落で、「ストキャスティクスを信じ込みすぎてはいけない」と説明しました。そこで必要となるのが「自己ルール」です。例えば、「チャートが20pips反対に動いたらすぐに損切りする」というイメージです。自己ルールを作ることでストキャスティクスの情報が外れても、損失を最小限に抑えることができます。
まとめ
今回は、FXで使うストキャスティクスについて説明しました。ストキャスティクスとは、通貨の売買比率を把握したい場合に役立つオシレーター系テクニカル指標です。取引の勢力図が分かるので、買いと売りのどちらにエントリーをした方が勝率は高くなるのかを予測できます。
ストキャスティクスを使う場合は、取引の根拠を強めるために、移動平均線やボリンジャーバンドなど、他のインジケーターと組み合わせて使いましょう。FX初心者は、比較的シンプルで使いやすいMACD(マックディー)と組み合わせることをおすすめします。